「――エルディーテが失踪、ですか……」
騎士団の執務室で宰相のグラウスから告げられた言葉に、帝国騎士団団長のレニー・レイヴンは狼狽えていた。
休暇を許可していた部下の女騎士が一人、行方不明になったからだ。
王女サフィアの殺害事件の調書を取り纏めていた最中の報告で、それは不吉なものを感じさせた。
彼女は王女と親しい間柄であった。
その事をレニーは概ね理解していたために、真っ先に思い浮かんだのは、自責に駆られて姿を消したという線だ。
しかしエルディーテの父でもあるユーク・グラウスは至極冷静に言った。
「息子も所在不明です。私兵を使って二人を探すので、エルディーテについては休暇の延長申請をしていただければ」
呑気に休暇の延長などと言われ、レニーは前のめりに問いかける。
「手がかりはあるのですか?」
「えぇ、エルディーテから置手紙が一通ありましたので」
「そこにはなんと?」
「冥界へ行ってくる、とのみ。迷惑をかけますが頼みます」
エルディーテらしい。
手紙というには短すぎる無駄な装飾が一切ない、通達と呼ぶ方が相応しい一文が残っていたという。
ユークは、娘は何か考えがあるのだろうと言った。
冥界と聞いて真っ先に思い浮かぶのは、地上と冥界を繋ぐ扉の存在だ。
エルディーテはそこに居るのだろうか。
確信は持てないが、手紙があるのだからおそらくそうなのだろう。
彼女は嘘をつかない。
きっと冥界へ行くという不穏な書置きはさぞかしユークも心配しているに違いない。
――これは好機だ。
騎士団の執務室で宰相のグラウスから告げられた言葉に、帝国騎士団団長のレニー・レイヴンは狼狽えていた。
休暇を許可していた部下の女騎士が一人、行方不明になったからだ。
王女サフィアの殺害事件の調書を取り纏めていた最中の報告で、それは不吉なものを感じさせた。
彼女は王女と親しい間柄であった。
その事をレニーは概ね理解していたために、真っ先に思い浮かんだのは、自責に駆られて姿を消したという線だ。
しかしエルディーテの父でもあるユーク・グラウスは至極冷静に言った。
「息子も所在不明です。私兵を使って二人を探すので、エルディーテについては休暇の延長申請をしていただければ」
呑気に休暇の延長などと言われ、レニーは前のめりに問いかける。
「手がかりはあるのですか?」
「えぇ、エルディーテから置手紙が一通ありましたので」
「そこにはなんと?」
「冥界へ行ってくる、とのみ。迷惑をかけますが頼みます」
エルディーテらしい。
手紙というには短すぎる無駄な装飾が一切ない、通達と呼ぶ方が相応しい一文が残っていたという。
ユークは、娘は何か考えがあるのだろうと言った。
冥界と聞いて真っ先に思い浮かぶのは、地上と冥界を繋ぐ扉の存在だ。
エルディーテはそこに居るのだろうか。
確信は持てないが、手紙があるのだからおそらくそうなのだろう。
彼女は嘘をつかない。
きっと冥界へ行くという不穏な書置きはさぞかしユークも心配しているに違いない。
――これは好機だ。


