「――何かいいものは見つかったか?」
突如、扉の外で声が響いた。
ハッとしてエルディーテは最初に入ってきた扉を見る。
あの声は外に居るケルベロスのものだ。
邸を出たエルディーテはケルベロスを見上げた。
「貴族の屋敷のような場所だった。中は変な扉がいくつもあったが……この邸は一体なんだ?」
「協力すると言っただろう。お前を助けるためのものだ」
ケルベロスは六つの眼はエルディーテをじっと捉えたあと言った。
「……ここに居ると寿命を縮める。だがあの邸に中に居れば少しはマシだ。俺を寝かしつける妙案でも思いついたら出てきて試せばいい」
「ありがたい申し出だが、悠長なことをするつもりはない。それに妙な青い鳥が居た。あれはなんだ?」
体感ではとても命を削られている感覚はなかった。
実際、感じさせるものではないのかもしれない。
だがエルディーテは己の命よりもサフィアの魂がいつまで留まっているかが重要だ。
寿命が縮まるという審議を確認することよりも関心があったのは先ほどの鳥のほうだった。
だがケルベロスは視線を眇めて問い返す。
「鳥?そんなものは覚えていないな。お前が作り出したのでは?なんでもあると言っただろう。強く望んだものが現れる。ただし幻だがな」
ケルベロスを信用するなと告げて消えた鳥の言葉を信じたわけではなかったが、しかし冷気が漂う薄ら寒いこの無機質な冥界で喋る存在というのはけして軽んじることはできない。
――あの鳥は幻だったのだろうか。
そんな疑問が胸に落ちた。
弟のディアンから死者の復活の噂を聞いてからずっと、何を信じるか試され続けている。
鳥の言葉、ケルベロスの言葉、二つは相反している。
試練を達成するためには、何が本当なのか見極めなければならない。
エルディーテは暫く思案したのち、ケルベロスに問いかけた。
「あの邸にお前を眠らせるためのものを望めば、それが出てくると取っていいのか?」
「なるほど。面白いな」
ケルベロスは小さな欠伸を零したのち歯列を覗かせる。
「だが俺自身どうすれば眠れるかは分からない。試したいならやってみればいい」
「……分かった」
協力するという意思が本当ならば、邸はエルディーテに何らかのヒントを与えるはずだ。
ケルベロスの善意が本物か確かめるためエルディーテは再び鎧を身に着け剣を取った。
さきほどの鳥といい、何が出てくるかは分からない。


