妖喰いの悪食花嫁〜喰われるはずの生贄は、百鬼の主と百日の契約結婚を結ぶ〜

 自分を助けに来た。
 棗ではなく、白無垢を着た自分を選び直したのかもしれない。

「お前を迎えに来たわけではない」

 期待を見透かしたように、ぬらりひょんが告げる。

「……え?」
「棗に頼まれて、お前を助けに来ただけだ」
「どうして……棗が」

 自分なら、棗を助けない。
 杏にはそれが分かっている。だからこそ、棗が助けを求めた理由を理解できなかった。

「お前に死んでほしいわけではないそうだ。助けた後は、完全に無関係になりたいとも言っていた」

 棗が生きている……?
 その事実に杏の顔が歪む。
 許されたのではない。恨まれる価値さえないと言われたようだった。

「棗に……?」
「ああ。お前が殺そうとした女にな」

 会場へざわめきが広がった。
 ぬらりひょんは妖が落とした護符を拾い上げる。
 杏の血と、棗から流れ込んだ霊力が染みついた護符。

「これは、双子の因果を利用して俺の結界を抜けるためのものだ。藤宮の巫女が、自ら妖へ渡した」
「違うわ!」

 杏は反射的に叫んだ。

「私は、そんなもの……」
「ならば、なぜお前の血が染みている」
「御前様。これは何かの誤解でございます。娘がそのようなことをするはずが……まずは場所を改めて」
「都合が悪くなれば隠すか。代々、生贄の娘を闇へ葬ってきた時と同じように」