四十九日目の朝、棗は庭先で茶を飲んでいた。
ここに来た頃は、出されたものへ口をつけるだけで警戒した。今では、湯気の立つ茶を飲みながら朝の庭を眺める時間を覚えている。
風が木々を揺らす。
その音へ、異質な気配が混じった。
棗が顔を上げるより早く、庭の影から妖が飛び出した。
牙が肩へ迫る。
龍眼が開き妖の内側にある核が、赤黒く浮かぶ。
棗は身を引く間もなく、妖核を見つめたまま息を吸った。
口を開いたわけでもないのに、喉の奥が妖を欲しがる。
龍眼に見つめられた核が震え、妖の身体から引き剥がされた。
黒い身体が崩れ、霧となって口元へ流れ込んでくる。
触れる必要すらなかった。
一匹目が消えた直後、天井の影から二匹目が落ちる。
棗を押さえつけようと伸びた腕が、龍眼に捉えられた途端に黒い煙へ変わった。
棗の喉へ、苦い妖気が流れ込む。
「どこから入った!!」
いつもなら余裕を崩さない蛍が、屋敷の結界を抜かれたことに目を細める。
その間にも三匹目、四匹目が棗へ群がった。
棗は立ち上がることなく、龍眼が核を捉えるたび、妖たちは恐怖の声を上げながら霧散し、棗の中へ吸い込まれる。
妖たちの身体には、同じ護符の匂いが絡みつく。
結界を正面から破ったのではない。棗と同じ霊力をまとい、妻として受け入れられた気配へ紛れている。
「……この程度の妖、かぶりつく必要もないのか」
ここに来た頃は、出されたものへ口をつけるだけで警戒した。今では、湯気の立つ茶を飲みながら朝の庭を眺める時間を覚えている。
風が木々を揺らす。
その音へ、異質な気配が混じった。
棗が顔を上げるより早く、庭の影から妖が飛び出した。
牙が肩へ迫る。
龍眼が開き妖の内側にある核が、赤黒く浮かぶ。
棗は身を引く間もなく、妖核を見つめたまま息を吸った。
口を開いたわけでもないのに、喉の奥が妖を欲しがる。
龍眼に見つめられた核が震え、妖の身体から引き剥がされた。
黒い身体が崩れ、霧となって口元へ流れ込んでくる。
触れる必要すらなかった。
一匹目が消えた直後、天井の影から二匹目が落ちる。
棗を押さえつけようと伸びた腕が、龍眼に捉えられた途端に黒い煙へ変わった。
棗の喉へ、苦い妖気が流れ込む。
「どこから入った!!」
いつもなら余裕を崩さない蛍が、屋敷の結界を抜かれたことに目を細める。
その間にも三匹目、四匹目が棗へ群がった。
棗は立ち上がることなく、龍眼が核を捉えるたび、妖たちは恐怖の声を上げながら霧散し、棗の中へ吸い込まれる。
妖たちの身体には、同じ護符の匂いが絡みつく。
結界を正面から破ったのではない。棗と同じ霊力をまとい、妻として受け入れられた気配へ紛れている。
「……この程度の妖、かぶりつく必要もないのか」



