妖喰いの悪食花嫁〜喰われるはずの生贄は、百鬼の主と百日の契約結婚を結ぶ〜

 問いながら、杏は答えを否定してほしかった。
 自分は棗より優れている。家族も、領民も、婚家も、ずっとそう言ってきた。
 それがすべて、棗の力を身にまとっていたからだとは認められない。

 母が目を伏せる。
 その仕草だけで、答えは十分だった。

「本来なら、棗が生贄となった後、四十九日をかけて残った霊力がお前へ定着するはずだった。百鬼の主が棗を生かしたため、流れが細くなったのだろう」

 杏の祝言は、棗の四十九日に合わせて決められていた。
 妹を悼むためではない。
 棗の力が自分へ完全に移る日だったから。

「どうして、今まで黙っていたの……」
「お前が知る必要はなかった。棗を取り戻せば済む。百鬼の主が応じないなら別の方法を探す」

 この指から溢れていた光は、棗のもの……?
 棗が生きている限り、自分の力は戻らない。
 婚家に偽物の巫女だと知られれば、祝言も、これまで向けられてきた敬意も失う。

 棗は死ぬために生まれた。
 自分は愛され、嫁ぐために育てられた。
 その順序が狂っただけ。

「四十九日までに、棗が死ねばいいのね」