契約結婚ですが、旦那様は私に触れられません 〜光と闇が紡いだ奇跡〜


☆☆☆

男の身柄を警察に渡した。
男は、楓の使用人として最近働き始めたばかりだという。
澄を誘拐し、東雲家に渡す為の保留場として勤め先にしたらしく、楓に対する忠誠心は一切なかったそう。

「澄さん。本当に申し訳ありませんでした」

あれから数日経過し、楓が久遠家に謝罪に来た。
しかし、澄は慌てて顔を上げさせた。

「そんな…! 西園寺様は何も…むしろ、勝手に敷地を使われて、被害者ではありませんか」
「いや、これは彼を雇った主人である僕の責任だ。澄さんは優しくそう言ってくださるが…律。お前にも詫びたい。奥方様を危険に晒して、申し訳なかった」
「…そうだな。お前は、その甘さをどうにかしろ」

眉ひとつ動かさず、冷たく言い放つと、澄は律の方を見た。
楓は何も言えず、伏目がちになった。

「旦那様、そんな…!」
「勘違いするな、俺は怒っていない。楓。お前は人を見る目がなさすぎる。昔から誰でも信用するから、こういうことになるんだ。一体、何度傷つけられれば気が済むんだ」

澄は二人のやり取りを見つめながら、そっと胸を撫で下ろした。