「っ…」
「澄、もう大丈夫だ」
ぎゅっと強く瞑った目。
律の優しい声がすると、ゆっくりと目を開けた。
あの日と同じ、真っ暗な世界。
けれど、お互いの姿は認識できる不思議な空間。
目を細め、柔らかい表情で笑っている彼に安堵するとまたぽろぽろと涙が溢れた。
「っ…旦那様、旦那様っ…」
ぎゅっと抱きついた。
「…心配したぞ。でも、間に合ってよかった…異能力『幽界』ーー解」
異能力を解くと、世界はまた現実へと戻った。
ただ、澄を抱えたまま解いたことを除いては、何も変わらなかった。
「…何ともない、な?」
「はいっ…触ってます…!」
これまで触れ合えることがなかった分、事実を確認するとお互いにぎゅっと抱き合った。
「お二人、そういうのは家でやってくれると有難いのですが」
「っ、楓…」
楓の言葉により、律は慌てて澄を下ろした。
地面には、先程まで澄を捉えていた男の体に縄状の光がぐるぐるに巻かれて横たわっている。
「でも、どうしてお前…」
「どうしてって、ここは西園寺家の敷地で律が不法侵入してるんだ。強力な異能を感じてやってきたら…まったく」
はぁ、と呆れたようにため息を吐く楓。
この広大な土地は、西園寺家の敷地ということ以外、謎が多い。

