契約結婚ですが、旦那様は私に触れられません 〜光と闇が紡いだ奇跡〜


「潮さんがいそうな所…八百屋さんとお話しされていそう…」

商店街に向かう道中、潮がいそうな場所を考えぼそりと呟いた。

「すみません」
「えっ…? は、はい…?」

背後から声をかけられると、振り返ったが誰もいない。
キョロキョロと辺りを見渡しても誰もいない。
不思議に思い首を傾げた後、もう一度商店街の方へ向かおうとすると、ぐいっと後方へ引き寄せられた。
口元に何かを当てられると、視界がぐらっと歪んだ。
力が緩み、足元に酒瓶が落ちると破片が散らばった。

(なに、これ…?)

意識が遠のく中、最後の力を振り絞って胸元に入れたお守りをぎゅっと握った。

(も…ダメ…旦那様…)

力が抜け、腕をだらんとさせるとそのまま視界が真っ暗になった。

「…澄?」

職務中、律にお守りから異能の気配が飛んでくると、妻の名を呼んだ。

「どうした、久遠」

突然声を出した律に、上司が尋ねると静かに立ち上がった。

「…何やら穏やかではない異能の気配を察知しました。調査へ参ります」

律は眼光を鋭くさせ、上司の承諾を得て外へ出た。

「異能力、『闇渡』」

律が異能力を発動すると、全身を黒い靄が包み込みすっと姿を消した。