「私は、知っています。旦那様が悪戯に人の心を読んだり、洗脳なんてしないって…! むしろ、旦那様はお優しいじゃないですか…!」
「…優しい? 俺が?」
初めて向けられた言葉に、目を丸くして驚いた。
「はい。その…世継ぎのことをちゃんとできない私の事、追い出さないし、雷の時は…怪我をするかもしれないのに、私の事を助けてくれました。これを優しいと言わず、なんと言うのですか」
「…違う」
将来的に、世継ぎができればいいと思っていた行動を優しいと言われれば、否定した。
しかし、次の言葉が出てこなかった。
「お守りもくださりましたよ、ほら」
そう言うと、澄の為にと選んだ桜色のお守りを見せた。
「…俺は、澄に触れなくなってよかったかもしれん」
「えっ…!? い、今そのような事を…?」
何か失礼な事を言ったのではないかと思い、取り繕うとした。
律は澄を見つめたまま、しばらく何も言わなかった。
そしてゆっくりと視線を窓へ向けた。
(涙を拭ってやれないのは心苦しいが、きっと触れていたら、俺は今ーー)
自分の中に初めて芽生える違和感を誤魔化すように、澄から視線を逸らした。

