「大丈夫ですか。久遠 澄さん」
「えっ…あっ…」
優しく微笑み、手を差し出す西園寺。
月城でなく、久遠の姓で呼ばれると一瞬呆然とした。
しかし、すぐに自分のことだと察するとこくりと頷いて差し出された手を握り立ち上がった。
「も…申し訳ありません。お招き頂いた場で、騒ぎを起こしてしまい…」
「とんでもない。多少の騒ぎは、宴には付きものです。それに、貴女には感謝を伝えたい」
「えっ…?」
西園寺の言葉に小首を傾げた。
「先程は、我が西園寺の名誉を守って頂き、ありがとうございました。また、使用人にまで気を遣って頂けるとは。心優しいご婦人だ」
柔らかい笑みを浮かべ、深く頭を下げる彼に戸惑う澄。
「そ、そんな…! 顔を上げてください…!」
慌てて彼の前で小刻みに動いていると、その動きにクスッと笑われた。
「心根が優しい貴女だからーー澄さん。少しよろしいか?」
「え…?」
顔を上げた彼が、髪の隙間から覗く首の痣に吸い込まれるように目を見開いた。
その痣を確かめるように、髪へ手を伸ばしたその瞬間。
パシッと乾いた音がした。
「おい、何やってるんだ。楓」
澄に伸びた手を律が掴み、ギロリと睨んだ。

