契約結婚ですが、旦那様は私に触れられません 〜光と闇が紡いだ奇跡〜


「…?」

初めて参加した澄でも、この場が異様だということには気付いた。
きょとんとして律を見るが、何も言わない。

「ねぇ、あれ…」
「久遠家よ。まさか、奥方様を歓迎する会ではあるけど本当に来るとはね…」

ヒソヒソと話す声が聞こえた。
不思議に思っていると、子どもが駆け寄って来て澄がニコッと笑うが、律を指差して口を開いた。

「バケモノだ!」
「…えっ?」
「こらっ。近寄るなと…!」

そう言うと、手に持っていた石を律目掛けて投げた。
しかし、律は慣れたように手でそれを地へ叩き落とした。

「帰るぞ、澄」
「えっ…?」
「やはり、来るのではなかった」

ボソリと呟き、くるりと振り返る律。
この場を見ても、誰も何も言わない。
何が起こったのか分からず、戸惑っていると今度は子どもがテーブルに綺麗に並べられた料理を手掴みした。

「出て行け! バケモノは、出て…!」

それを投げようとした瞬間、静かに近づいた澄が料理を握り潰す子どもの手を掴んだ。

「おやめください。ご子息」
「…澄?」

子どもと同じ目線まで腰を落とすと、優しく言った。
怒るでもなく悟るように口を開いた。
澄の声に振り返ると、律は目を見開いた。

「せっかく作ってくださった方が、悲しんでしまいます」

澄の言葉に、一歩退く子ども。
その子どもの前に、大きな人影が現れた。