「ま、まさか…私に、抱きつけ、と…?」
「そうだ。俺の異能力は、向かってきたものを闇に包み込む事ができる。だから、来い…!」
「そんな…っ。私、自分で異能を出していないんです…! だから、また…旦那様に怪我を負わせるかもしれません…!」
両手を広げたまま、言う彼の胸に飛び込めるわけがない。
リスクがありすぎる。
嫌々と首を横に振る澄に、律は口を開いた。
「構わん」
「…え?」
「光の異能で放出する守護は、大体見切った。澄が思うような事は繰り返さない。だから、何度でも俺を吹き飛ばせ。何度でも迎えに行ってやる」
律がそう言った瞬間、澄は目を大きく見開いた。
あの日の言葉の続きが、聞こえた気がした。
『ーーっ、ーー!』
『ーろっ、ーー!』
『ーろっ、すー!』
『生きろっ、澄!』
『お前だけでも生きてくれたら、俺達はそれでいい』
父は、澄を責めてなどいなかった。
むしろ、生きてほしいと願っていた。
親の命に代えても、子の長い未来に懸けたかった。
「っ…旦那様っ…!」
「来い! …異能力、『幽界』」
ベッドから飛び出し、律の胸へと一目散に飛び込んだ。
澄の光の異能力が発揮される前に、律が異能を唱えると辺りは一変、真っ暗闇へと変貌した。

