契約結婚ですが、旦那様は私に触れられません 〜光と闇が紡いだ奇跡〜


☆☆☆

ぱちっと目を覚ますと、そこは久遠家。

「はっ…! へ…?」

夢だったのだと悟ると、ホッと安堵した。
けれど、頬に伝う涙は冷たく垂れた。

(…久しぶりに見たわ、あの夢)

頬に伝う涙を指で拭うと、ぼんやりと窓の方へ視線を向けた。
窓に打ちつける雨を見て、「っ…」と息を飲んだ。

「今日は雨…か。このまま止んでくれたらいいけど」

ぼんやりとそう呟き、寝巻きから着物へと着替えた。
化粧を終え、髪を結い終えると、考えるのは先日の律との事。

「今日追い出されたら…どうしよう…」

そんな不安をぼそりと呟いた。
朝食の時間さえ避ければ、律と会うことはない。
彼は日中、仕事へ出ている。
夜ご飯の時間も、別々。
だから、朝さえ会わなければ…そう思いながら部屋のドアを開けると、丁度澄の部屋の前を通る律がいた。

「あっ…お…おはようございます。旦那様」
「…あぁ。おはよう」

会わないように過ごそうと思ったのに、早速出会ってしまった。
気まずいと思いながらも、彼の後ろをついて歩き声をかけた。

「あの…旦那様」
「なんだ」
「その…頬のお加減、いかがですか…?」

恐る恐る尋ねると、律は歩きながら答えた。