契約結婚ですが、旦那様は私に触れられません 〜光と闇が紡いだ奇跡〜


『ーーっ、ーー!』

誰かが、何かを叫んでいる。
その瞬間、澄は誰かに覆い被さられ目の前には赤く燃え上がる炎が見えた。

(そうだ、これで私はーー!)

何かの映像がフラッシュバックすると同時にパチっ!と音がなると体がふっと軽くなった。
ベッドの下には、頬を押さえたまま、律は目を見開いていた。
驚いている。
そんな彼の表情を、澄は初めて見た。

(今…何が…?)

むくりと上体を起こすと、目から大粒の涙がぽろぽろと溢れた。
戸惑っていたが、すぐ律と同じ目線になるようベッドから降りた。

「も…申し訳ございませんっ…旦那様」

三つ指ついて頭を深く下げた。
そして、頭を上げ律の赤くなった頬をどうにかしようと近付いた瞬間。

バチっ!

火花が散った。
律は手から黒い靄を放出すると、それを吸収した。

「え…な、何…?」

目の前で起こった事に、戸惑っていると冷静に口を開いた。

「異能だ」
「…え?」
「光の異能。今のはーー守護、か。それ程嫌だったのか」

それだけ言うと、律は立ち上がりドアの方へ向かった。

「今日はもういい。部屋で休め」
「えっ…でも、私…」
「泣いている女とそういう事ができるほど、飢えていない」

律にそう言われれば、澄は大人しく立ち上がった。
部屋から出ると、くるりと振り返って深々と頭を下げた。

「…申し訳ありませんでした」

そう告げたものの、言い終わる頃にはドアを閉められた。
澄は閉ざされた扉を見つめたまま、しばらく動くことができなかった。