「しかしーー奥様の命であれば、我々は従います」
「へ…?」
「澄様…」
笹森が意味ありげに澄へ視線を向ける。
しかし、上手く通じておらずきょとんとしていると、金谷が澄に耳打ちをした。
「澄様が私どもに命じてくだされば、一緒に食べられるという笹森さんのお気遣いです。当主が席を外した今、私どもは澄さんの指示に従います」
そう伝えれば、納得し嬉しそうに笑みを溢す澄。
そして、初めての事に少し緊張しながらも口を開いた。
「そ、それでは…みなさん。一緒に頂きましょう…!」
「はい。喜んで」
「ありがとうございます」
恥ずかしそうにする澄だったが、一声かけると使用人達はテーブルに料理を並べた。
「それでは…頂きましょう」
「はい。頂きます」
「頂きます」
使用人たちと笑い合いながら囲む食卓は、澄にとって久しぶりの温かな時間だった。
その笑い声が、静まり返った律の部屋までは届かないとも知らず――。

