☆☆☆
「この飯食い虫がっ! 親のいないお前を引き取ってやったのに、能力でも役に立たないのか!」
遡る事、一時間前。
いつもは閑静な内海家の屋敷に、当主の怒鳴り声が響いた。
「…申し訳ございません」
澄が三つ指ついて深々と頭を下げるが、それでも怒りは収まらない当主。
ワナワナと肩を震わせ、怒りで顔は真っ赤になっている。
怒りに任せて机に置いてあった灰皿を投げつけた。
灰皿は畳を滑り、澄の膝元で止まった。
「姉さんの娘だから、ここまで育ててやったのに…! 忌み能力など開花させおって…!」
「…はい」
「今すぐ荷物をまとめて出て行け! 二度とその顔を見せるな!」
「…はい。お世話になりました」
澄が抵抗なく言えば、頭を上げて部屋から出て自室へ向かった。
澄に与えられた部屋は、物置を改装しただけのような六畳にも満たない薄暗い部屋だった。
そのため、荷物もあまりなく一つの風呂敷にまとめられる程度だった。
「澄様っ…!」
「…清子さん」
荷物をまとめて部屋から出ると、一番交流のあった使用人清子が声をかけてきた。
「そのお荷物…まさか、本当に…?」
先程の当主とのやりとりを聞いていたようで、清子が心配そうに顔を覗き込んだ。

