☆☆☆
「まず、これだな」
そう言うと、律は『誓約書』と書いてある紙の束を澄に差し出した。
紙には文字が羅列されており、一通り目を通すだけでも大変だ。
パラパラと紙をめくっていると、律が口を開いた。
「そこに書いてあることを簡単に説明する」
「は、はい…」
説明すると言われれば、めくっていた手を止めて律の顔を見た。
「一年間、俺と結婚しこの屋敷で共に暮らしてもらう」
「…え?」
その言葉に、何度か瞬きを繰り返した。
ふざけている様子はなく、真剣な表情で言う律。
簡単にとは言ったが、突拍子もない話である。
「あ、あの…人探し、という事ではないのでしょうか…?」
「あぁ、そうだ。俺と一年、この屋敷で生活を共にする者を探していた。そして、一年後、契約を継続するかどうかは互いの意思で決める」
「は、はぁ…」
いまいち話が読めないが、とりあえず納得した体で話を続けた。
「結納金も、離縁後の生活費も支払う。特に、離縁後に関してはそちらの言い値を支払おう。名家との離縁で次の縁談が遠のいたからと恨まれては敵わんからな」
随分と羽振りのいい話に、澄の心は揺らいだ。

