すみれにその自覚がないのは分かっている。
だが、この無防備な信頼は——時として残酷な試練のように、俺の理性を試してくる。
苦笑を漏らしつつ、すみれを抱き上げ、優しくベッドへ横たえた。
眠りを妨げぬよう細心の注意を払って着物の帯を解き、苦しくない程度に結び直す。
ふっと、彼女の寝顔が和らぐ。
それを見た瞬間、収めたはずの欲が——試すように、また顔を覗かせた。
掌で、滑らかな頬を一度だけ撫でる。
そして額に、そっと唇を寄せた。
いずれ、正しい知識と自信を得たすみれは、今よりずっと美しく輝くだろう。
あの日、予感した通りの『大輪の華』として開花するはずだ。
その姿を一番側で、誰よりも近くで見守りたい。
だがその反面——
俺だけの手の中で、誰の目にも触れさせることなく。
鳥かごに閉じ込めた美しい小鳥のように、自分だけがその歌声と羽ばたきを愛でていたい。
そんな独善的な欲望も、確かに俺の中に根を張っている。
この醜くも深い、相反する想いを知ったら、彼女はどう思うだろうか。
変わってほしくない。
今のままの、純粋で汚れのない彼女でいてほしい。
……けれど、俺がどれほど歪んだ眼差しで彼女を見つめ、渇望しているか。
今のすみれは、まだ想像だにしていないだろう。
「……おやすみ、すみれ」
時が来るまで。
黒く渦巻く情念を胸の奥底へと沈め、俺は静かに部屋の灯りを落とした。
だが、この無防備な信頼は——時として残酷な試練のように、俺の理性を試してくる。
苦笑を漏らしつつ、すみれを抱き上げ、優しくベッドへ横たえた。
眠りを妨げぬよう細心の注意を払って着物の帯を解き、苦しくない程度に結び直す。
ふっと、彼女の寝顔が和らぐ。
それを見た瞬間、収めたはずの欲が——試すように、また顔を覗かせた。
掌で、滑らかな頬を一度だけ撫でる。
そして額に、そっと唇を寄せた。
いずれ、正しい知識と自信を得たすみれは、今よりずっと美しく輝くだろう。
あの日、予感した通りの『大輪の華』として開花するはずだ。
その姿を一番側で、誰よりも近くで見守りたい。
だがその反面——
俺だけの手の中で、誰の目にも触れさせることなく。
鳥かごに閉じ込めた美しい小鳥のように、自分だけがその歌声と羽ばたきを愛でていたい。
そんな独善的な欲望も、確かに俺の中に根を張っている。
この醜くも深い、相反する想いを知ったら、彼女はどう思うだろうか。
変わってほしくない。
今のままの、純粋で汚れのない彼女でいてほしい。
……けれど、俺がどれほど歪んだ眼差しで彼女を見つめ、渇望しているか。
今のすみれは、まだ想像だにしていないだろう。
「……おやすみ、すみれ」
時が来るまで。
黒く渦巻く情念を胸の奥底へと沈め、俺は静かに部屋の灯りを落とした。



