低く、そっけない声。
暁臣様はそのまま、隣にある自室の方へ向かって歩き出そうとする。
数日ぶりにこの家へ戻れた。それだけで満足すべきだ。
彼は怒っているのではない。きっと、ただ疲れているだけ。
——分かっている。分かっているのに。
「っ……暁臣様!」
気がつけば、身体が勝手に動いていた。
廊下を駆け、暁臣様の背中に後ろからしがみつく。
拒まれるかもしれない。
こんな子どもじみた真似、困らせるだけなのに。
頭の片隅で冷静な自分が叫んでいるのに、どうしても止められなかった。
「あ、あの……!怒ってくださって構いません。勝手なことをした私を、叱ってくださっても……それでも、それでも私は……まだ、こちらでご一緒させていただきたいのです……!」
初めて自覚してしまった『恋』と言う感情が、私のすべてを突き動かしていた。
怖いのに、離れたくない。
甘えてはいけないのに、触れてほしい。
暁臣様の手がゆっくりと動き、私の手に触れた。
そして、一つずつ指を解くようにして、私の腕が離されていく。
……やっぱり、駄目だったんだ。
暁臣様もお疲れだ。
こんな時まで、私の勝手に付き合わされるのは苦痛でしかないはずだ。
そんな言い訳で自分を慰め、項垂れようとした——その瞬間。
解かれた私の手は、そのまま彼の大きな掌に包み込まれた。
何も言わずに、私の手を引いたまま、暁臣様は自室の扉を静かに開け、私を中へと招き入れる。
言葉はない。
けれど、拒絶ではない。
扉の向こうに滑り込んだ空気が、ふわりと私の頬を撫でた。
胸の奥で、固く縮こまっていたものが、ほどけていく。
暁臣様はそのまま、隣にある自室の方へ向かって歩き出そうとする。
数日ぶりにこの家へ戻れた。それだけで満足すべきだ。
彼は怒っているのではない。きっと、ただ疲れているだけ。
——分かっている。分かっているのに。
「っ……暁臣様!」
気がつけば、身体が勝手に動いていた。
廊下を駆け、暁臣様の背中に後ろからしがみつく。
拒まれるかもしれない。
こんな子どもじみた真似、困らせるだけなのに。
頭の片隅で冷静な自分が叫んでいるのに、どうしても止められなかった。
「あ、あの……!怒ってくださって構いません。勝手なことをした私を、叱ってくださっても……それでも、それでも私は……まだ、こちらでご一緒させていただきたいのです……!」
初めて自覚してしまった『恋』と言う感情が、私のすべてを突き動かしていた。
怖いのに、離れたくない。
甘えてはいけないのに、触れてほしい。
暁臣様の手がゆっくりと動き、私の手に触れた。
そして、一つずつ指を解くようにして、私の腕が離されていく。
……やっぱり、駄目だったんだ。
暁臣様もお疲れだ。
こんな時まで、私の勝手に付き合わされるのは苦痛でしかないはずだ。
そんな言い訳で自分を慰め、項垂れようとした——その瞬間。
解かれた私の手は、そのまま彼の大きな掌に包み込まれた。
何も言わずに、私の手を引いたまま、暁臣様は自室の扉を静かに開け、私を中へと招き入れる。
言葉はない。
けれど、拒絶ではない。
扉の向こうに滑り込んだ空気が、ふわりと私の頬を撫でた。
胸の奥で、固く縮こまっていたものが、ほどけていく。



