【Web版】無華の花嫁2~花開く乙女は、お妃教育の先で黒薔薇の殿下に溺愛される~

その言葉を裏付けるように、廊下の向こうから騒がしい足音が聞こえ始めた。
怒号に近い、複数の声。
床が震えるほどの勢いで近づいてくる。

知らない人たちが力ずくで、私に『婚約破棄』を迫るために乗り込んできたのだろうか。
宮家と言う場所は安全だと——勝手に思い込んでいた。
けれど、今はどこも安全には見えない。

どうか、信子さんだけでも無傷でここから出してもらいたい——。

祈るように握りしめた拳に、力がこもる。
爪が掌に食い込み、痛みで自分を繋ぎ止める。

だが、その騒乱の中に。
私は聞き紛えるはずのない声を——確かに、聞いた気がした。

心臓が跳ねる。
重厚で、けれど絶対的な安心をくれる空気。
胸の奥が、ひどく熱くなる。

間違えるわけがない。

扉に駆け寄り、ドアノブを回した。
ガチャン、ガチャン。
虚しい金属音だけが響く。

やはり外側から鍵がかけられていて、扉はびくともしない。

すぐそこに、すぐそこにいるのに。
暁臣様が——。

「すみれ!そこにいるのか……!」
「暁臣様っ!」
「千鶴!今すぐ鍵を開けろ!!」
「暁お兄様……嫌です!開けませんわ、絶対に!」

外で何が起きているのかは見えない。
けれど千鶴様の叫び声が、彼女が本気で私たちを会わせまいとしていることを物語っていた。
その必死さが、逆に恐ろしい。

「すみれ。……扉から離れろ」