車中、窓の外の景色は流れていくのに、頭の中だけが一点に張り付いて離れない。
すみれが怯えていないか。信子殿が傷つけられていないか。
最悪の想像を打ち消そうとするほど、胸の奥の黒い薔薇が棘を伸ばす。
到着した鷹宮邸の門前には、前回訪れた時よりも明らかに衛兵の数が増えていた。
俺が来ることを警戒し、手厚く包囲を固めたのだろう。
なんと無意味で、そして無駄な抵抗か。
「五条家嫡男、五条暁臣だ。千鶴に面会を求める。門を開けろ」
「で、殿下!本日はお嬢様より、約束のない者は通すなと厳命されております!」
昨日まで、呼びもしない俺の邸へ軽々しく通っていた口で、今日になってそれか。
後ろ暗い何かを隠していると、自ら喧伝しているのと同じではないか。
「宮家の衛兵ならば、俺の『異能』が何を意味するか、知っているだろう」
すみれと二人きりの時以外、決して外すことのない手袋。
それを迷いなく引き抜き、地面へと投げ捨てた。
素肌が空気に触れる。
それだけで周囲の気配が引き攣り、衛兵の喉が鳴るのが分かった。
「この程度の門も、お前たちも。俺にとっては塵芥も同然だ。『黒薔薇』の餌食になりたくなければ、今すぐそこをどけ」
有無を言わせぬ圧に、衛兵たちが顔を青ざめさせて道をあける。
邸内へと足を踏み入れると、どこからともなく湧いて出た使用人たちが、焦燥に駆られた様子で俺を取り囲んだ。
誰もが俺の素手から視線を逸らし、息を呑む。その恐れが、今は邪魔でしかない。
「殿下……!これ以上は……!」
「どけ!……すみれ!どこだ!!!」
狼狽する彼らを一瞥もせず、迷わず客間のある奥へと突き進む。
この胸を締めつける焦りは、理屈で抑えられない。
「暁お兄様。あれほどお伺いするなと仰っておりましたのに」
「千鶴……貴様」
「でも、やっぱり予想通り。衛兵を退けてまで千鶴に会いに来てくださいましたのね。嬉しいですわ」
すみれが怯えていないか。信子殿が傷つけられていないか。
最悪の想像を打ち消そうとするほど、胸の奥の黒い薔薇が棘を伸ばす。
到着した鷹宮邸の門前には、前回訪れた時よりも明らかに衛兵の数が増えていた。
俺が来ることを警戒し、手厚く包囲を固めたのだろう。
なんと無意味で、そして無駄な抵抗か。
「五条家嫡男、五条暁臣だ。千鶴に面会を求める。門を開けろ」
「で、殿下!本日はお嬢様より、約束のない者は通すなと厳命されております!」
昨日まで、呼びもしない俺の邸へ軽々しく通っていた口で、今日になってそれか。
後ろ暗い何かを隠していると、自ら喧伝しているのと同じではないか。
「宮家の衛兵ならば、俺の『異能』が何を意味するか、知っているだろう」
すみれと二人きりの時以外、決して外すことのない手袋。
それを迷いなく引き抜き、地面へと投げ捨てた。
素肌が空気に触れる。
それだけで周囲の気配が引き攣り、衛兵の喉が鳴るのが分かった。
「この程度の門も、お前たちも。俺にとっては塵芥も同然だ。『黒薔薇』の餌食になりたくなければ、今すぐそこをどけ」
有無を言わせぬ圧に、衛兵たちが顔を青ざめさせて道をあける。
邸内へと足を踏み入れると、どこからともなく湧いて出た使用人たちが、焦燥に駆られた様子で俺を取り囲んだ。
誰もが俺の素手から視線を逸らし、息を呑む。その恐れが、今は邪魔でしかない。
「殿下……!これ以上は……!」
「どけ!……すみれ!どこだ!!!」
狼狽する彼らを一瞥もせず、迷わず客間のある奥へと突き進む。
この胸を締めつける焦りは、理屈で抑えられない。
「暁お兄様。あれほどお伺いするなと仰っておりましたのに」
「千鶴……貴様」
「でも、やっぱり予想通り。衛兵を退けてまで千鶴に会いに来てくださいましたのね。嬉しいですわ」



