『会わなければ』——それは、私が物理的に暁臣様から引き離される、と言う意味なのか。
そんなことが、本当に可能なのだろうか。
皇族の婚約と言う重みを、こんなふうに『気分』で動かせるものなの?
「折を見て、いくらかの暇金でも持たせれば……」
障子越しに聞こえてくる、いつもと全く変わらない千鶴様の笑い声に、背筋がぞくりと粟立つ。
まさか……千鶴様が、そんなことを考えていたの……?
ずっと信子さんが『おかしい』と警告してくれていたのに。
その言葉の真意を、私は今になってようやく理解する。
——遅すぎる。
「すみれお嬢様、すぐにお邸を出ましょう……。支度など後回しで構いません。今すぐに」
耳元で囁く信子さんの声は、震えている。
私はただ、僅かに頷くことしかできない。
信子さんの言う通りだ。
すぐに、ここから……出なければ。
怯える脚で踵を返し、息を殺して歩き出そうとした——その時。
ギッ……。
不運にも、私の足が板の間を鈍く踏み鳴らしてしまった。
音は小さい。けれど、この静けさの中では大きすぎる。
あぁ……どうしよう。
次の一歩が、もう踏み出せない。
恐怖が鉛になって、私の身体を床に縛り付ける。
心臓の鼓動だけが耳の内側で暴れ、呼吸が浅くなる。
「あら?……すみれ様ではありませんか」
そんなことが、本当に可能なのだろうか。
皇族の婚約と言う重みを、こんなふうに『気分』で動かせるものなの?
「折を見て、いくらかの暇金でも持たせれば……」
障子越しに聞こえてくる、いつもと全く変わらない千鶴様の笑い声に、背筋がぞくりと粟立つ。
まさか……千鶴様が、そんなことを考えていたの……?
ずっと信子さんが『おかしい』と警告してくれていたのに。
その言葉の真意を、私は今になってようやく理解する。
——遅すぎる。
「すみれお嬢様、すぐにお邸を出ましょう……。支度など後回しで構いません。今すぐに」
耳元で囁く信子さんの声は、震えている。
私はただ、僅かに頷くことしかできない。
信子さんの言う通りだ。
すぐに、ここから……出なければ。
怯える脚で踵を返し、息を殺して歩き出そうとした——その時。
ギッ……。
不運にも、私の足が板の間を鈍く踏み鳴らしてしまった。
音は小さい。けれど、この静けさの中では大きすぎる。
あぁ……どうしよう。
次の一歩が、もう踏み出せない。
恐怖が鉛になって、私の身体を床に縛り付ける。
心臓の鼓動だけが耳の内側で暴れ、呼吸が浅くなる。
「あら?……すみれ様ではありませんか」



