すみれが鷹宮邸に滞在を始めてから、一週間。
信子殿を側に付け、毎日、細部まで書きつけた報告を上げさせる。
それでようやく——俺は辛うじて、理性の均衡を保っていた。
報告書は夜ごと机上に積まれ、一字一句を逃すまいと目を走らせる。
『よく眠っておられました』『少しだけ湯あたりをされたご様子』
たったそれだけの記述にさえ、胸の奥がほどける。
紙を指で押さえれば、そこに彼女の体温が移るはずもないのに、なぜかそれを求めてしまう。
いないと頭では分かっているのに。
帰宅するたび、無意識にすみれの姿を探してしまう。
明かりの消えた隣室。
気配の絶えた廊下。
いつもなら、そこにいたはずの穏やかな『温度』だけが抜け落ちていて、その空白が、言いようのない喪失感となって俺に襲いかかる。
「重症だな……」
誰に聞かせるでもなく、自嘲の混じった呟きが漏れる。
これほどまでに一人の少女に、己の平穏を委ねていたとは。
たった一週間で、帰る場所が『場所』ではなくなるなど——。
寝室のカーテンの揺れ方さえ違って見える。
彼女が笑えば空気が柔らかくなると、今になって思い知らされる。
馬鹿げているのに。それでも、探してしまう。今も。
「殿下、鷹宮千鶴様がいらっしゃいました」
「……分かった。すぐ行く」
信子殿を側に付け、毎日、細部まで書きつけた報告を上げさせる。
それでようやく——俺は辛うじて、理性の均衡を保っていた。
報告書は夜ごと机上に積まれ、一字一句を逃すまいと目を走らせる。
『よく眠っておられました』『少しだけ湯あたりをされたご様子』
たったそれだけの記述にさえ、胸の奥がほどける。
紙を指で押さえれば、そこに彼女の体温が移るはずもないのに、なぜかそれを求めてしまう。
いないと頭では分かっているのに。
帰宅するたび、無意識にすみれの姿を探してしまう。
明かりの消えた隣室。
気配の絶えた廊下。
いつもなら、そこにいたはずの穏やかな『温度』だけが抜け落ちていて、その空白が、言いようのない喪失感となって俺に襲いかかる。
「重症だな……」
誰に聞かせるでもなく、自嘲の混じった呟きが漏れる。
これほどまでに一人の少女に、己の平穏を委ねていたとは。
たった一週間で、帰る場所が『場所』ではなくなるなど——。
寝室のカーテンの揺れ方さえ違って見える。
彼女が笑えば空気が柔らかくなると、今になって思い知らされる。
馬鹿げているのに。それでも、探してしまう。今も。
「殿下、鷹宮千鶴様がいらっしゃいました」
「……分かった。すぐ行く」



