暁臣様があのお邸で、私以外の誰かと食事をし、微笑み合っているなんて。
私には彼の行動を制限する権利も資格もないと分かっているのに、胸の奥が、幼い子どものように駄々をこねていた。
「すみれお嬢様……。心配されるようなことはないかと思いますが……今からでもお邸に戻られますか?」
「……信子さん……」
この日を境に、千鶴様が私の不在を埋めるように暁臣様の元へ通うことが増えた。
私が暁臣様のお邸にお世話になってから、彼がこのように特定のお客様を頻繁に招き入れることなど、一度もなかったはずなのに。
もし、今戻っても、私のために用意していただいた部屋がなくなっていたら?
千鶴様の非の打ち所のない所作を目の当たりにした暁臣様が、私との婚約を後悔し、冷めてしまっていたら……。
そんなはずはない。暁臣様はそんなお方ではない。
頭では必死に理解しようとするのに、足元から少しずつ、大切な居場所が剥がれ落ちていくような恐怖が、夜も眠れぬほど私を襲っていた。
「すみれお嬢様。やはり、これはおかしいです」
「おかしい……ですか?」
「はい。殿下は本来、あのように頻繁に『特定の方だけ』を招き入れるお方ではありません。まるで意図的にお嬢様をここに留め置き、殿下から遠ざけているように見えます」
信子さんの鋭い指摘に、私は息を呑む。
なんのために……?
これまで私は、自分で考え、決断することを放棄するような生き方をしてきてしまった。
蔵に閉じ込められていた時は、それでよかった。
何も考えず、流されるまま生き、ただ自分の生が終わる日を待つだけ。
無駄だと分かっていても、考え続けることを放棄してダメだったのに。
今の私は、あの頃の自分には戻れない。
暁臣様は、私にぬくもりと食事を与えてくれた。
安心できる部屋と、未来への希望を与えてくれた。
何より、『自分で考えて行動していい』と、私の意思を、私と言う個性を肯定してくれた。
「私は、すみれお嬢様が本当にされたいことをお手伝いいたします」
「……私が、したいこと」
私には彼の行動を制限する権利も資格もないと分かっているのに、胸の奥が、幼い子どものように駄々をこねていた。
「すみれお嬢様……。心配されるようなことはないかと思いますが……今からでもお邸に戻られますか?」
「……信子さん……」
この日を境に、千鶴様が私の不在を埋めるように暁臣様の元へ通うことが増えた。
私が暁臣様のお邸にお世話になってから、彼がこのように特定のお客様を頻繁に招き入れることなど、一度もなかったはずなのに。
もし、今戻っても、私のために用意していただいた部屋がなくなっていたら?
千鶴様の非の打ち所のない所作を目の当たりにした暁臣様が、私との婚約を後悔し、冷めてしまっていたら……。
そんなはずはない。暁臣様はそんなお方ではない。
頭では必死に理解しようとするのに、足元から少しずつ、大切な居場所が剥がれ落ちていくような恐怖が、夜も眠れぬほど私を襲っていた。
「すみれお嬢様。やはり、これはおかしいです」
「おかしい……ですか?」
「はい。殿下は本来、あのように頻繁に『特定の方だけ』を招き入れるお方ではありません。まるで意図的にお嬢様をここに留め置き、殿下から遠ざけているように見えます」
信子さんの鋭い指摘に、私は息を呑む。
なんのために……?
これまで私は、自分で考え、決断することを放棄するような生き方をしてきてしまった。
蔵に閉じ込められていた時は、それでよかった。
何も考えず、流されるまま生き、ただ自分の生が終わる日を待つだけ。
無駄だと分かっていても、考え続けることを放棄してダメだったのに。
今の私は、あの頃の自分には戻れない。
暁臣様は、私にぬくもりと食事を与えてくれた。
安心できる部屋と、未来への希望を与えてくれた。
何より、『自分で考えて行動していい』と、私の意思を、私と言う個性を肯定してくれた。
「私は、すみれお嬢様が本当にされたいことをお手伝いいたします」
「……私が、したいこと」



