「暁臣様……」
その名前を口にするだけで、胸の奥がキュッと締め付けられる。
出会ってからの半年の間。私はどれほど彼に守られ、甘やかされ、安心ができる『居場所』を与えられていたのか。
ここに来て初めて、その幸せの重みを実感するなんて。
お手伝いも拒まれ、何もすることがないまま、刻一刻と過ぎていく時間。
……薄暗くもないこの部屋で、なぜか朝霞家の、あの蔵の中で過ごしていた日々が蘇ってくる。
誰にも声をかけられず、存在を気にされることもなかった、透明な毎日。
息を潜めて、ただ時が過ぎるのを待っていた、あの孤独な痛み。
私は、暁臣様の差し伸べてくれた手を振り払ってまで、何をしているのだろう。
持ってきた手控え帳をめくる。
信子さんと作りかけの刺繍も持ってくればよかった。
私がここに残ったのは、以前のように息を殺して過ごすためではないはずなのに。
「すみれ様。お客様がいらしております」
千鶴様のお邸に、私を訪ねてくる人なんて?
案内された客間に入るなり、飛び込んできたのは——。
「すみれお嬢様!」
「信子さん……!?」
「申し訳ありません、あの時、私がもっと強くお止めしていれば……」
「いいえ、信子さんは何も。私が、自分勝手なことをしたのです」
暁臣様が『人を寄こす』と仰っていたのは、信子さんのことだったなんて。
申し訳ない気持ちもあるのに……心配してもらえると言うことが、こんなに嬉しいなんて。
「殿下も、気が気でないご様子でしたわ。私と一緒に帰りましょう?」
「いえ、でも……」
帰りたい。今すぐにでも、暁臣様のいるあのお邸に。
けれど、瞼を閉じれば千鶴様の、あの完璧な所作が焼き付いて離れない。
今逃げ出せば、私は一生、暁臣様の隣に立つ自信を持てないのではないか。
そんな焦りが、私の足をその場に縫い付ける。
その名前を口にするだけで、胸の奥がキュッと締め付けられる。
出会ってからの半年の間。私はどれほど彼に守られ、甘やかされ、安心ができる『居場所』を与えられていたのか。
ここに来て初めて、その幸せの重みを実感するなんて。
お手伝いも拒まれ、何もすることがないまま、刻一刻と過ぎていく時間。
……薄暗くもないこの部屋で、なぜか朝霞家の、あの蔵の中で過ごしていた日々が蘇ってくる。
誰にも声をかけられず、存在を気にされることもなかった、透明な毎日。
息を潜めて、ただ時が過ぎるのを待っていた、あの孤独な痛み。
私は、暁臣様の差し伸べてくれた手を振り払ってまで、何をしているのだろう。
持ってきた手控え帳をめくる。
信子さんと作りかけの刺繍も持ってくればよかった。
私がここに残ったのは、以前のように息を殺して過ごすためではないはずなのに。
「すみれ様。お客様がいらしております」
千鶴様のお邸に、私を訪ねてくる人なんて?
案内された客間に入るなり、飛び込んできたのは——。
「すみれお嬢様!」
「信子さん……!?」
「申し訳ありません、あの時、私がもっと強くお止めしていれば……」
「いいえ、信子さんは何も。私が、自分勝手なことをしたのです」
暁臣様が『人を寄こす』と仰っていたのは、信子さんのことだったなんて。
申し訳ない気持ちもあるのに……心配してもらえると言うことが、こんなに嬉しいなんて。
「殿下も、気が気でないご様子でしたわ。私と一緒に帰りましょう?」
「いえ、でも……」
帰りたい。今すぐにでも、暁臣様のいるあのお邸に。
けれど、瞼を閉じれば千鶴様の、あの完璧な所作が焼き付いて離れない。
今逃げ出せば、私は一生、暁臣様の隣に立つ自信を持てないのではないか。
そんな焦りが、私の足をその場に縫い付ける。



