向かい側に腰を下ろす。
千鶴様の口ぶりには、ここがまるで気心の知れた場所であるかのような余裕があった。
幼い頃から交流があるのなら当然なのだろう。
——けれど、もし。
彼女は暁臣様の私室にさえ、昔から自由に出入りしていたのではないか。
そんな考えがよぎった瞬間、胸の奥がまたズキリと、鈍い音を立てて痛んだ。
今日の千鶴様は、先日の茶会の時とは打って変わり、仕立てのよい洋服を軽やかに着こなし、豊かな黒髪を美しく下ろしていた。
緩やかに流れる髪に飾られた大きなリボンが、可憐さをいっそう引き立てている。
ああ、やっぱり何度見ても——なんてお綺麗なお方なのだろう。
「こちら、お土産ですの。よろしかったら召し上がってくださいな」
差し出された箱が開けられる。
中には、黒い宝石のように光り輝く粒が、整然と並んでいた。
「あの……ありがとうございます」
「あら。……ひょっとして、チョコレート、初めてご覧になりました?」
その一言に、顔がカッと熱くなり、言葉を失ってしまった。
名前こそ聞いたことはある。けれど、こんな姿をしているとは知らなかった。
——千鶴様にとっては、知っていて当然のこと。
私に欠けているものが、また一つ、形になって突きつけられた気がした。
「失礼いたします。こちら、ありがたく頂戴いたしますね」
「……そちらの方は、どなた?」
「あ……信子さんは、私の家庭教師をしてくださっていて……」
「あら!どのようなことを学んでいらっしゃるの?千鶴にも教えてくださる?」
「今日は、刺繍を……」
そう答えた瞬間、千鶴様がふっと笑みを零した。
「まあ……刺繍を『授業』で?それは随分、丁寧なお時間をお過ごしですのね」
千鶴様の口ぶりには、ここがまるで気心の知れた場所であるかのような余裕があった。
幼い頃から交流があるのなら当然なのだろう。
——けれど、もし。
彼女は暁臣様の私室にさえ、昔から自由に出入りしていたのではないか。
そんな考えがよぎった瞬間、胸の奥がまたズキリと、鈍い音を立てて痛んだ。
今日の千鶴様は、先日の茶会の時とは打って変わり、仕立てのよい洋服を軽やかに着こなし、豊かな黒髪を美しく下ろしていた。
緩やかに流れる髪に飾られた大きなリボンが、可憐さをいっそう引き立てている。
ああ、やっぱり何度見ても——なんてお綺麗なお方なのだろう。
「こちら、お土産ですの。よろしかったら召し上がってくださいな」
差し出された箱が開けられる。
中には、黒い宝石のように光り輝く粒が、整然と並んでいた。
「あの……ありがとうございます」
「あら。……ひょっとして、チョコレート、初めてご覧になりました?」
その一言に、顔がカッと熱くなり、言葉を失ってしまった。
名前こそ聞いたことはある。けれど、こんな姿をしているとは知らなかった。
——千鶴様にとっては、知っていて当然のこと。
私に欠けているものが、また一つ、形になって突きつけられた気がした。
「失礼いたします。こちら、ありがたく頂戴いたしますね」
「……そちらの方は、どなた?」
「あ……信子さんは、私の家庭教師をしてくださっていて……」
「あら!どのようなことを学んでいらっしゃるの?千鶴にも教えてくださる?」
「今日は、刺繍を……」
そう答えた瞬間、千鶴様がふっと笑みを零した。
「まあ……刺繍を『授業』で?それは随分、丁寧なお時間をお過ごしですのね」



