「すみれ様。……鷹宮千鶴様がお見えなのですが……」
「え……?」
千鶴様……?
手元で動かしていた刺繍の針が、ぴたりと止まった。
驚きのあまり、隣に座る信子さんと図らずも顔を見合わせてしまう。
千鶴様とお会いしたのは、二週間前、あのお茶会の時が最後。
あの日以来、お会いする約束も、個人的なお手紙のやり取りも一切ない。
どうして、突然——。
「いかがいたしましょうか。お約束がないのでしたら、本日はお引き取りいただくようお伝えいたしますが……」
「い、いえ……!そんな……」
ダメだ。
何のご用件かさえ伺わず、ましてや宮家のお血筋である千鶴様を、私のような者が追い返すなんて。
そんな無礼を働けば、暁臣様の顔に泥を塗る。
——その想像だけで、喉がひやりと硬くなる。
不安げに私を見つめる信子さんと、再び目が合った。
「すみれお嬢様。もしご迷惑でなければ、私も同席させていただいてもよろしいでしょうか?」
「信子さん……!ありがとうございます。ぜひ、お願いします……」
信子さんに付き添われ、千鶴様が待つと言う客間へと向かう。
廊下を進む足音が、妙に大きく響く気がした。
扉の前で一度、深く、肺の奥まで空気を吸い込む。
教わった通り、ゆっくりとノックをしてから扉を開けた。
陽光が差し込むソファに腰を下ろし、用意されたお茶を優雅に口にしている千鶴様の姿があった。
「突然の訪問、申し訳ありませんわ。たまたま近くまで参りましたので、お顔を拝見したくなったのです」
「いえ。とんでもありません。ようこそお越しくださいました」
「相変わらず、暁お兄様のお邸は素敵ですわね。……千鶴も、いつかこちらに住みたいと思っておりましたの」
「え……?」
千鶴様……?
手元で動かしていた刺繍の針が、ぴたりと止まった。
驚きのあまり、隣に座る信子さんと図らずも顔を見合わせてしまう。
千鶴様とお会いしたのは、二週間前、あのお茶会の時が最後。
あの日以来、お会いする約束も、個人的なお手紙のやり取りも一切ない。
どうして、突然——。
「いかがいたしましょうか。お約束がないのでしたら、本日はお引き取りいただくようお伝えいたしますが……」
「い、いえ……!そんな……」
ダメだ。
何のご用件かさえ伺わず、ましてや宮家のお血筋である千鶴様を、私のような者が追い返すなんて。
そんな無礼を働けば、暁臣様の顔に泥を塗る。
——その想像だけで、喉がひやりと硬くなる。
不安げに私を見つめる信子さんと、再び目が合った。
「すみれお嬢様。もしご迷惑でなければ、私も同席させていただいてもよろしいでしょうか?」
「信子さん……!ありがとうございます。ぜひ、お願いします……」
信子さんに付き添われ、千鶴様が待つと言う客間へと向かう。
廊下を進む足音が、妙に大きく響く気がした。
扉の前で一度、深く、肺の奥まで空気を吸い込む。
教わった通り、ゆっくりとノックをしてから扉を開けた。
陽光が差し込むソファに腰を下ろし、用意されたお茶を優雅に口にしている千鶴様の姿があった。
「突然の訪問、申し訳ありませんわ。たまたま近くまで参りましたので、お顔を拝見したくなったのです」
「いえ。とんでもありません。ようこそお越しくださいました」
「相変わらず、暁お兄様のお邸は素敵ですわね。……千鶴も、いつかこちらに住みたいと思っておりましたの」



