「……すみれ?」
名を呼ばれただけで、心臓が跳ねる。
顔を上げなきゃ、と分かっているのに、視線が迷子になる。
その時——。
「ひゃっ……!」
「すまない。……今日は珍しく髪を上げているからな」
首筋に、暁臣様のしなやかな指先が触れた。
手袋越しではない熱が、そこだけ小さな火になったみたいに広がっていく。
「うなじが涼しげだ。……とても、よく似合っている」
耳元で囁かれた低く甘い声に、胸の中が一気に騒がしくなる。
さっきまで、髪を上げたせいで心細かった首筋が、今はもう熱くてたまらない。
どうしよう……。
必死に暗記してきた作法が、暁臣様の一言で全部吹き飛んでしまいそうだ。
けれど、そんな私の内心を余所に、暁臣様はいつものように優しく手を取ってくださる。
その掌の温度に導かれるまま、榊原様の運転する車の後部座席へ。
乗り込む直前、暁臣様が私の指をそっと握り直した。
『大丈夫』と言葉にされなくても、そこにあるのは確かな支えで——胸の奥がじん、と温かくなる。
名を呼ばれただけで、心臓が跳ねる。
顔を上げなきゃ、と分かっているのに、視線が迷子になる。
その時——。
「ひゃっ……!」
「すまない。……今日は珍しく髪を上げているからな」
首筋に、暁臣様のしなやかな指先が触れた。
手袋越しではない熱が、そこだけ小さな火になったみたいに広がっていく。
「うなじが涼しげだ。……とても、よく似合っている」
耳元で囁かれた低く甘い声に、胸の中が一気に騒がしくなる。
さっきまで、髪を上げたせいで心細かった首筋が、今はもう熱くてたまらない。
どうしよう……。
必死に暗記してきた作法が、暁臣様の一言で全部吹き飛んでしまいそうだ。
けれど、そんな私の内心を余所に、暁臣様はいつものように優しく手を取ってくださる。
その掌の温度に導かれるまま、榊原様の運転する車の後部座席へ。
乗り込む直前、暁臣様が私の指をそっと握り直した。
『大丈夫』と言葉にされなくても、そこにあるのは確かな支えで——胸の奥がじん、と温かくなる。



