【Web版】無華の花嫁2~花開く乙女は、お妃教育の先で黒薔薇の殿下に溺愛される~

「信子さんにお茶を振舞ったんです。そうしたら、美味しいって……褒めていただけて」
「信子さんには、七歳と五歳のお子様がいらっしゃるそうで……」
「いつか、一緒にお買い物に行けたらね、なんてお話ししたんです」
「あと、お料理とお裁縫も教えてくださると。……暁臣様、よろしいでしょうか?」

まさか、これほどまでに分かりやすく喜ぶとは。
信子殿と言う『安心』を得られたことが、彼女にとってどれほどの救いになったか。
俺の危惧など、全くの取り越し苦労だったわけだ。
……いや。取り越し苦労で済んだなら、それが最善だ。

だが、本音を言うならば——
この輝くような笑顔を引き出すのは、他の誰でもない、俺でありたかった。
俺に対しては、いつもどこか遠慮がちに照れたり、はにかんだりすることが多いと言うのに。
俺の前で笑う彼女は、どうしても『慎重』だ。
その慎重さが、彼女を生かしてきた術だと分かっていても、胸の奥がざらつく。

「そうだな」

なるべく平静に、頷く。

「すみれが自由に使える金についても、近いうちに渡そうと考えていた。信子殿と出かけるなら、入り用だろう」
「!そ、そんな……自由なお金なんて……私、そんなつもりじゃ……っ」
「事前に言ってくれれば問題ない。すみれの好きなように使えばいい」
「でも……」
「気にするな」
「暁臣様……本当に、本当にありがとうございます」

遠慮しながらも、差し出された厚意を拒絶せずに受け取ろうと言う意思が生まれた。
——それだけでも、喜ぶべき変化なのだろう。
彼女は今まで、受け取ることすら選択肢になかったのだから。

朝霞家で虐げられてきた彼女の境遇を考えれば、今はただ、何の心配もない安らぎに満ちた生活を送らせてやりたい。
本音を言えば、妃教育など必要ない。
読み書きができる程度で十分だ。
何もできずとも、俺はすみれを妃にする。
誰にも文句は言わせない。これは決定事項だ。
それを押し通すだけの地位も権限も、俺は持っている。

——だが。