【Web版】無華の花嫁2~花開く乙女は、お妃教育の先で黒薔薇の殿下に溺愛される~

この命も、身体も、心も。
他の誰でもない、自分自身のためですらなく、ただ暁臣様のために捧げよう、と。

「すみれ……。お前は、ただ俺の横で笑ってくれていれば、それでいいんだ」
「そんな……あ、んっ……」

四度目の口づけは、今までのどれとも違っていた。
暁臣様の情熱が、そのまま流れ込んでくるような——熱く、深く、逃げ場のない口づけ。
胸の奥の氷を溶かし、代わりに別の熱を満たしていく。
怖いのに、もっと欲しくなる。

「はぁ……ぁ、ぁきおみ……さま……っ」
「……っ。今は……ここまでだ。これ以上は、秋まで大切にとっておこう」

額を寄せ、荒い息のまま告げられる言葉。
その声に滲む自制の苦しさに、ほんの少しの安堵と——自分でも驚くほどの寂しさが残る。
欲張ってはいけないのに、胸の奥が名残を掴もうとしてしまう。

「秋……ですか?」

「ああ。俺たちの、婚儀の日取りが決まった」

秋。
木々が鮮やかな色彩に染まり、世界が黄金色に輝く季節。
その季節に、私は名実ともに彼の妻になる。

「秋が楽しみだ。……すみれを、本当の意味で俺の家族に迎えられる日が」
「はい……。私も、楽しみです。暁臣様」

私の狭くて暗い世界を壊し、数えきれないほどの『初めて』をくれた方。
これから経験する出来事は、今までの比ではないほど鮮烈で、眩しいものになるのだろう。

それはどんな風景を私に見せてくれ、どんな感情を教えてくれるのだろうか。
まだ分からないことだらけの世界だけれど、暁臣様と言う色に染められていくのなら、何も怖くない。

灰色だった私の世界は、彼の手によって、今、鮮やかに色づき始めている。
私のすべてを、暁臣様の色で染め上げてほしい。
そんな幸福な願いを抱いたまま、私は再び近づいてきた彼の愛しさと、懐かしい香りに身を委ねた。
永遠のような愛を誓い、この先の暁臣様との未来に——静かに、想いを馳せた。