【Web版】無華の花嫁2~花開く乙女は、お妃教育の先で黒薔薇の殿下に溺愛される~

無邪気に話しかけられて、私も同じように目を細めて微笑んでいることに気づく。
自分がこんな顔をするなんて——なんだかおかしくなってしまう。

お年玉の準備も、この珍しい飲み物もお菓子の手配も。
結局、暁臣様に頼りきりでのおもてなしになってしまった。
それでも、今日この時間が穏やかに流れていることが、ただ嬉しい。

「これは最近出回り始めた乳酸の飲み物だそうですよ。実は私も、頂くのは初めてで……」
「そうだったのですね。飲み物も、お菓子も……暁臣様が用意してくださったんです」

用意されたお菓子を美味しそうに頬張る子どもたちを見つめる信子さんの表情。
お子さんの前では、こんな表情をされるなんて。

お仕事の時の姿とは違う、慈愛に満ちた、柔らかく溶けるような眼差し。
声色も、普段よりほんの少し高く、優しく聞こえる。
何より、その瞳には——代えがたい宝物を愛しそうに見つめる、深い幸せが宿っていた。

私も……いつか、暁臣様との間に、あんな風に笑う子どもを授かる日が来るのだろうか……。

——っ。

結婚を夢見るだけでなく、そのさらに先の未来まで想像してしまった自分に気づいて、全身に血が昇る。
まだ正式な婚儀さえ済ませていないのに。
あまりにも分不相応で、気が早い空想をしてしまったことに、顔が火照って仕方がない。

「すみれお嬢様?お顔が真っ赤ですが……お熱でもありますか?」
「い、いえ!大丈夫です!少し……お部屋が少し暑いだけですから……っ!」

必死に誤魔化そうとすればするほど、私の記憶の底から、暗い澱のような記憶が這い上がってくる。
幸福に触れた瞬間ほど、刺さるものがある。
——私は、知らないのだ。母と言うものを。

私の知っている『実母』の記憶は……冷たい手で私の首を絞め、絶望のままに走り去っていく後ろ姿。
そして、信子さんのような優しさを『継母』に求め、鋭い言葉と、蹴られ、叩かれる痛みによって、無残に打ち砕かれた。
その二つの記憶だけ。

手を伸ばしても、いつも痛みが返ってくる。
——それしか知らない。