信子さんに促され、お二人の傍らで静かに呼ばれるのを待つ。
やがて、広間へ移動するよう係の者が告げた。
流されるまま、重厚な廊下を歩き始める。
足音さえ吸い込まれていくような、異様な静けさだった。
前を行く高貴な方々の背中を見つめながら、私はふと我に返る。
これから、この国で最も高貴な方にお目にかかる……。
お会いするのは二度目になるけれど……。
『無華』と呼ばれ、何の価値もないと捨てられた私が——どうして、こんな場所に立っているのだろう。
辿り着いた広間は、私の想像を絶する広さだった。
床は鏡のように磨き上げられ、壁も天井も、歴史の重みを感じさせる金色の装飾で眩いばかりに煌めいている。
数えきれないほどの視線が、針のように肌を刺す。
息を吸うだけで、胸がきゅっと縮んだ。
視界が狭まり、次の一歩が出ない。
少しずつ、お母様やお姉様との距離が開いていってしまう。
けれど——視界の端に、暁臣様の軍服の背中を見つけた瞬間。
磁石に吸い寄せられるように足が動き出した。
彼の隣に並び、一瞬だけ目が合う。
その刹那、ようやく肺に空気が入った気がした。
——大丈夫、と無言で言われたみたいに。
「五条暁臣殿下」
朗々と名が呼ばれ、暁臣様が一歩前へ進み出る。
私はその半歩後ろに、影のようにぴたりと付き従う。
背筋を伸ばし、息を整え、教わった通りに。
やがて、広間へ移動するよう係の者が告げた。
流されるまま、重厚な廊下を歩き始める。
足音さえ吸い込まれていくような、異様な静けさだった。
前を行く高貴な方々の背中を見つめながら、私はふと我に返る。
これから、この国で最も高貴な方にお目にかかる……。
お会いするのは二度目になるけれど……。
『無華』と呼ばれ、何の価値もないと捨てられた私が——どうして、こんな場所に立っているのだろう。
辿り着いた広間は、私の想像を絶する広さだった。
床は鏡のように磨き上げられ、壁も天井も、歴史の重みを感じさせる金色の装飾で眩いばかりに煌めいている。
数えきれないほどの視線が、針のように肌を刺す。
息を吸うだけで、胸がきゅっと縮んだ。
視界が狭まり、次の一歩が出ない。
少しずつ、お母様やお姉様との距離が開いていってしまう。
けれど——視界の端に、暁臣様の軍服の背中を見つけた瞬間。
磁石に吸い寄せられるように足が動き出した。
彼の隣に並び、一瞬だけ目が合う。
その刹那、ようやく肺に空気が入った気がした。
——大丈夫、と無言で言われたみたいに。
「五条暁臣殿下」
朗々と名が呼ばれ、暁臣様が一歩前へ進み出る。
私はその半歩後ろに、影のようにぴたりと付き従う。
背筋を伸ばし、息を整え、教わった通りに。



