【Web版】無華の花嫁2~花開く乙女は、お妃教育の先で黒薔薇の殿下に溺愛される~

……あれ。
いつも、こうして私が朝食を摂る時は暁臣様が一緒だった。
今朝も当然そうなのだと、どこかで決めつけていたのかもしれない。

「いつも……二人で一緒に、食べていたものですから……」
「まあ、左様でしたのね。でしたら、すぐにお呼びしてきますね」

信子さんの含みのある微笑みに、ふと疑問が湧く。
このお邸に来てから、一緒に食事を摂ることは私にとって日常の風景だった。けれど——

宮家のような尊いお方が、婚約者であるだけの私と、毎朝当たり前のように同じ卓を囲む。
それは、普通ではないことなのだろうか……?

胸の奥が、じわりと熱くなる。嬉しいのに、怖い。
そんな感情が同居して、上手く息ができない。

「すみれ。……明けましておめでとう。よく眠れたか?」
「明けましておめでとうございます。暁臣様」
「信子殿も、朝早くからすまない」

暁臣様が部屋に現れると、張り詰めていた空気が一瞬で整う。
その直後、テーブルには小ぶりなおにぎりと、彩り豊かなおばんざいが何品も並べられた。
湯気の立つ味噌汁の香りが、眠りの名残をさらっていく。

「信子殿は、朝食は済ませたか?」
「ええ、済ませてきておりますわ。私のことはどうぞお気になさらず、お召し上がりください」

暁臣様の隣に座り、信子さんの優しい見守りを背に感じながら箸を進める。
なんだか……信子さんの眼差しが優しすぎて、見透かされているような気恥ずかしさが込み上げてくる。
暁臣様が私に向ける視線も、いつもより少しだけ柔らかい気がして、余計に落ち着かない。

いつもは大好きな、梅干しの入ったおにぎり。
けれど今朝ばかりは緊張のせいか、その酸っぱさをあまり感じなかった。

朝食を済ませると、部屋の空気は俄かに慌ただしさを増す。

先日、初めて自分の意思で選ばせてもらった振袖と、それに合わせる小物が、女中さんたちの手で恭しく運び込まれてくる。
肌襦袢、長襦袢……。薄い絹の層が一枚、また一枚と重なるたび、背筋が自然と伸びた。
呼吸まで、慎重になる。