「お待たせいたしました!」
やがて、からからと小気味よい音を立ててティーワゴンを押し、溢れんばかりの笑みを浮かべたすみれが戻ってきた。
「お紅茶も、私が淹れてもよろしいでしょうか?」
「頼めるか」
「はい。藤波様に、正しい淹れ方を教わったんです。精一杯、頑張りますね」
カチャリ、と茶器が触れ合う音が静かに響く。
ティーポットを扱うすみれの細く白い指先。
まだ拙さは残っているが、一つ一つの動作を確かめるような丁寧さに、自然と目が奪われた。
ほどなくして、芳醇な紅茶の香りがふわりと立ち、部屋の空気を甘く染め上げていく。
この香りに混じる、彼女の気配。——それだけで、心が緩む。
「暁臣様は……お砂糖は、入れませんでしたよね?」
「ああ。ストレートで頼む」
連れて行った喫茶店で俺がストレートで飲んでいたことを、彼女は覚えていたのか。
すみれは周囲をよく観察し、受けた恩義や小さな記憶を、胸の奥底に大事にしまい込む。
最初から彼女に相応しい学ぶ場と、知識を身につける術さえ与えられていたなら——
今頃は、この国で最も聡明な女性の一人になっていたはずだ。
そんな確信めいた思考を巡らせていると、ふいに、すみれの動きが止まった。
「……あの。私、包丁を扱ったことがなくて……。ケーキは真ん中から切り分けるので、合っていますでしょうか?」
戸惑いながらナイフを持つ彼女の手元を見つめ、胸に微かな痛みが走る。
やがて、からからと小気味よい音を立ててティーワゴンを押し、溢れんばかりの笑みを浮かべたすみれが戻ってきた。
「お紅茶も、私が淹れてもよろしいでしょうか?」
「頼めるか」
「はい。藤波様に、正しい淹れ方を教わったんです。精一杯、頑張りますね」
カチャリ、と茶器が触れ合う音が静かに響く。
ティーポットを扱うすみれの細く白い指先。
まだ拙さは残っているが、一つ一つの動作を確かめるような丁寧さに、自然と目が奪われた。
ほどなくして、芳醇な紅茶の香りがふわりと立ち、部屋の空気を甘く染め上げていく。
この香りに混じる、彼女の気配。——それだけで、心が緩む。
「暁臣様は……お砂糖は、入れませんでしたよね?」
「ああ。ストレートで頼む」
連れて行った喫茶店で俺がストレートで飲んでいたことを、彼女は覚えていたのか。
すみれは周囲をよく観察し、受けた恩義や小さな記憶を、胸の奥底に大事にしまい込む。
最初から彼女に相応しい学ぶ場と、知識を身につける術さえ与えられていたなら——
今頃は、この国で最も聡明な女性の一人になっていたはずだ。
そんな確信めいた思考を巡らせていると、ふいに、すみれの動きが止まった。
「……あの。私、包丁を扱ったことがなくて……。ケーキは真ん中から切り分けるので、合っていますでしょうか?」
戸惑いながらナイフを持つ彼女の手元を見つめ、胸に微かな痛みが走る。



