【Web版】無華の花嫁2~花開く乙女は、お妃教育の先で黒薔薇の殿下に溺愛される~

「すみれ。……ただいま。待たせたな」
「おかえりなさいませ、暁臣様」

帰宅するなり、暁臣様は手袋を外し、私の手をごく自然に取った。
指先が触れ合う瞬間、胸がきゅっと鳴る。
こうしていると、指先から暁臣様の気持ちが伝わるようで——ただ触れられると言う、それだけのことが、今の私には涙が出るほど嬉しい。

いつもと同じ。けれど、今日だけは違う特別な夜。
向かい合って、私のお部屋のテーブルで夕食を共にする。
窓の外に広がる庭園の灯りが、暁臣様の彫刻のように美しい横顔を淡く照らしていた。
その柔らかな光が、彼の持つ高貴さと優雅さを、より一層際立たせている。

食事が終わりに近づくにつれ、いつ、どのタイミングで切り出すべきか——そわそわして落ち着かなくなってしまう。
贈り物をすることが、これほどまでに胸が高鳴り、心臓の音がうるさく感じるものだなんて、知らなかった。

暁臣様は……。
今まで、どんな気持ちで私に着物や宝飾品を贈ってくださっていたのだろう。
いつも当たり前のような顔をして手渡してくれていたけれど——。
もしかして、今の私と同じように、ほんの少しだけ胸の奥をドキドキさせたりしていたのだろうか。

……今なら、渡せるかしら。

膝の上で握りしめていた拳に、そっと力を込める。
逃げないように、自分の心臓を落ち着かせるように。
それから、静かに、目の前に座る暁臣様を見つめた。