【Web版】無華の花嫁2~花開く乙女は、お妃教育の先で黒薔薇の殿下に溺愛される~

「すみれお嬢様。こちらでよろしいでしょうか?念のため、開けて中身を確認してくださいね」
「はい。……ありがとうございます」

信子さんから、少しだけ重みのある白い箱を受け取る。
箱を留めている細いリボンを解き、小さな金色の封シールを——壊さないよう、慎重に指先で剥がし、そっと蓋を持ち上げた。

ふわり、と。
甘い香りが一瞬で鼻先をくすぐる。

中から現れたのは、雪のように真っ白な生クリームの上に、真っ赤に熟れた苺が隙間なく並べられたデコレーションケーキだった。
蜜を塗ったように艶めく苺は、午後の光を浴びて、まるで散りばめられた宝石みたいにきらきらと輝いている。

「……凄い。なんて、綺麗なの……」
「ふふ。きっと、殿下もお喜びになられますよ」
「はいっ。喜んでいただけると、いいのですが……」

胸の奥がくすぐったい。
それは緊張で、期待で、少しだけ怖くて——でも、嬉しさの方が勝っている。

このお部屋を最初に与えられた時。
暁臣様は『少し遅れた誕生日祝いだ』と言って、用意してくださったケーキを一緒に食べた。

あの時は、ただ『甘い』『綺麗』くらいしか分からなくて。
その儀式に込められた意味も、暁臣様が用意してくださった優しさも、まだ受け止めきれていなかったけれど——。

信子さんに教わったのだ。
誕生日にケーキを食べて祝うと言う、素敵な習慣があること。
そして、暁臣様の誕生日が『今日』であること。

だから、今日。
内緒で、信子さんに買ってきてもらった。
私からの、誕生日のお祝い。