暁臣様の手が、いつものように慈しみを込めて私の頬を撫でる。
その掌の温度が、怖いほど優しい。
もし、本当に私に相手の力を奪う能力があるのなら、私は全力でこの掌を拒絶しなければならない。
なのに——拒めない。
触れていたい。触れてほしい。
たったそれだけのことが、今の私には命綱みたいになっている。
暁臣様が近づく。
額が触れ、呼吸が重なる。
重なり合う唇は、これで三度目。
触れ合うたびに、暁臣様と言う存在が魂の奥深くまで溶け込んでくるのを感じる。
羞恥心よりも、欠けた器が満たされていくような静かな幸福感が、じわりと全身を支配していく。
やがて唇が離れ、額と額を寄せ合ったまま、暁臣様が囁く。
「いいんだ。もしその時が来ても……すみれになら、すべてを奪われても俺は構わない」
「暁臣様……」
言葉だけではない。
暁臣様は私の手を握り、指と指を複雑に絡め合わせる。
絡め取られるみたいに、逃げられない。
そして、その繋いだ手の甲に、熱い唇が落ちた。
「すみれ。もし万が一、お前が誰かに追い詰められ、身の危険を感じたなら……それがたとえ俺であっても、容赦なく奪え」
その言葉に、私は首を振ることしかできない。
『無華』として虐げられてきたからこそ、『華』を持てない、あるいは失うことの辛さは、誰よりも身をもって知っている。
大切な人ができるたびに、守りたいものが増えるたびに、失うことが怖くなっていく。
だからこそ、奪うなんて……できない。
まして、暁臣様からだなんて。
「他の誰よりも、俺の『黒薔薇』よりも、すみれのことが大切なんだ」
「……い、今は、本当に大丈夫なのでしょうか?」
「ああ。今こうして肌を合わせている分には、『異能』が無くなるような感覚はない」
「良かった……本当に、良かったです……」
その掌の温度が、怖いほど優しい。
もし、本当に私に相手の力を奪う能力があるのなら、私は全力でこの掌を拒絶しなければならない。
なのに——拒めない。
触れていたい。触れてほしい。
たったそれだけのことが、今の私には命綱みたいになっている。
暁臣様が近づく。
額が触れ、呼吸が重なる。
重なり合う唇は、これで三度目。
触れ合うたびに、暁臣様と言う存在が魂の奥深くまで溶け込んでくるのを感じる。
羞恥心よりも、欠けた器が満たされていくような静かな幸福感が、じわりと全身を支配していく。
やがて唇が離れ、額と額を寄せ合ったまま、暁臣様が囁く。
「いいんだ。もしその時が来ても……すみれになら、すべてを奪われても俺は構わない」
「暁臣様……」
言葉だけではない。
暁臣様は私の手を握り、指と指を複雑に絡め合わせる。
絡め取られるみたいに、逃げられない。
そして、その繋いだ手の甲に、熱い唇が落ちた。
「すみれ。もし万が一、お前が誰かに追い詰められ、身の危険を感じたなら……それがたとえ俺であっても、容赦なく奪え」
その言葉に、私は首を振ることしかできない。
『無華』として虐げられてきたからこそ、『華』を持てない、あるいは失うことの辛さは、誰よりも身をもって知っている。
大切な人ができるたびに、守りたいものが増えるたびに、失うことが怖くなっていく。
だからこそ、奪うなんて……できない。
まして、暁臣様からだなんて。
「他の誰よりも、俺の『黒薔薇』よりも、すみれのことが大切なんだ」
「……い、今は、本当に大丈夫なのでしょうか?」
「ああ。今こうして肌を合わせている分には、『異能』が無くなるような感覚はない」
「良かった……本当に、良かったです……」



