「すみれの妹……の『異能』が消滅したと言う話は、以前少しだけ触れたな?」
「……はい」
「現在も、彼女が病院に通っていると言う情報は、こちらにも届いている。あれから半年以上が経過したが——一度失われた『異能』が、再び発現する兆候はない」
淡々とした言葉のはずなのに、胸の奥がぎゅっと潰れた。
やっぱり。百合があの場所で叫んでいたことは、すべて真実だったのだ。
「この事実は、俺と父上、そして陛下……あとは極僅かな、信頼の置ける人間しか知らない」
「私……っ。奪うつもりなんて……。そんな恐ろしいことができるなんて、自分でも知らなかったんです……」
「もちろん、わかっている。お前がそんなことを望む人間ではないと、誰よりも俺が理解している」
『無華』であるはずの私が、こんなにも残酷な力を持っていたなんて。
それを知らずに、私はのうのうと生きてきたのだ。
なぜ、今までもっと踏み込んで聞こうとしなかったのか。
自分の無知が恐ろしい。
もっと早く、真実に向き合っておくべきだったのに。
自分で自分を制御できないと言うことが、これほどまでに恐ろしいなんて。
もし……このまま私が暁臣様のそばに居続けて、いつか『黒薔薇』さえも奪い去ってしまうようなことがあったら。
今、こうして触れていることさえ、許されない罪なのではないか。
私は、暁臣様の人生そのものを壊してしまうのではないか。
「あの、暁臣様。……百合に『華』を戻す方法は、本当にないのでしょうか?」
「……すみれの母親の遺骨に刻まれるはずの残穢すら消し去る力だ。恐らく、失われたものを取り戻す術は存在しない」
「……私は、どうしたら……。いつか、暁臣様の『黒薔薇』も、奪ってしまったらっ……」
私は元々、『無華』として生まれた。
最初から持っていなかったから、『華』がない状態が私にとっての日常だった。
けれど、百合は違う。
『あるはずのもの』が、一瞬で奪われる。
それがどれほどの喪失感であり、絶望であるか——想像するだけで息が詰まる。
まして百合は、これからも侯爵家の令嬢として生きていかなければならない身。
貴族社会において、『華』の有無や強弱は、そのまま家柄や個人の価値に直結する残酷な指標なのだから。
「すみれ」
「……はい」
「現在も、彼女が病院に通っていると言う情報は、こちらにも届いている。あれから半年以上が経過したが——一度失われた『異能』が、再び発現する兆候はない」
淡々とした言葉のはずなのに、胸の奥がぎゅっと潰れた。
やっぱり。百合があの場所で叫んでいたことは、すべて真実だったのだ。
「この事実は、俺と父上、そして陛下……あとは極僅かな、信頼の置ける人間しか知らない」
「私……っ。奪うつもりなんて……。そんな恐ろしいことができるなんて、自分でも知らなかったんです……」
「もちろん、わかっている。お前がそんなことを望む人間ではないと、誰よりも俺が理解している」
『無華』であるはずの私が、こんなにも残酷な力を持っていたなんて。
それを知らずに、私はのうのうと生きてきたのだ。
なぜ、今までもっと踏み込んで聞こうとしなかったのか。
自分の無知が恐ろしい。
もっと早く、真実に向き合っておくべきだったのに。
自分で自分を制御できないと言うことが、これほどまでに恐ろしいなんて。
もし……このまま私が暁臣様のそばに居続けて、いつか『黒薔薇』さえも奪い去ってしまうようなことがあったら。
今、こうして触れていることさえ、許されない罪なのではないか。
私は、暁臣様の人生そのものを壊してしまうのではないか。
「あの、暁臣様。……百合に『華』を戻す方法は、本当にないのでしょうか?」
「……すみれの母親の遺骨に刻まれるはずの残穢すら消し去る力だ。恐らく、失われたものを取り戻す術は存在しない」
「……私は、どうしたら……。いつか、暁臣様の『黒薔薇』も、奪ってしまったらっ……」
私は元々、『無華』として生まれた。
最初から持っていなかったから、『華』がない状態が私にとっての日常だった。
けれど、百合は違う。
『あるはずのもの』が、一瞬で奪われる。
それがどれほどの喪失感であり、絶望であるか——想像するだけで息が詰まる。
まして百合は、これからも侯爵家の令嬢として生きていかなければならない身。
貴族社会において、『華』の有無や強弱は、そのまま家柄や個人の価値に直結する残酷な指標なのだから。
「すみれ」



