『すみれが、母親の『異能』を……無効化したのではないかと考える』
そして暁臣様は『無効化』とも言っていた。
けれど……本当は奪っていたの?
『無効にした』だけではなく、『奪った』のだとしたら——。
『無華』であることをずっと嘆いていたけれど、誰かの異能を奪ってまで『華』を得たいなど、望んでもいない。
それなのに、現実として百合の力は失われている。
『赤薔薇』を持ち、鮮やかな発火の『異能』を誇っていた百合。
もし、その力が本当に完全に無くなってしまったのだとしたら。
生まれながらに何も持たない『無華』である私なんかよりも、今の彼女は——。
「……っ人の『華』まで奪うなんて!!返しなさいよっ!それがないと、私はっ——」
その先の言葉は、激しい感情の昂ぶりに掻き消され、聞き取れなかった。
けれど、言葉の『続き』がなんであるかだけは、嫌と言うほど伝わってくる。
ただ、私の中で——大切に守ってきた何かが静かに、けれど決定的に崩れ去る音がした。
せっかく手にした『世界』が、また指の隙間からこぼれ落ちていくような音が。
「失礼。すみれ様の妹君——朝霞百合様とお見受けします。園遊会で一度お会いしましたね」
榊原様が、氷の刃のように静かな声で割って入った。
けれど、その声音さえ、私は水底から聞いているみたいに遠い。
目の前で起きていることが現実であり、当事者であるはずなのに、身体だけが置き去りになっている。
「殿下より、接近禁止令に近い通達が出ているはずです。これ以上、すみれ様を惑わす発言はお控えください。——失礼いたします」
「っ、待ちなさいよ!逃げる気!?この『無華』のくせにっ!!——!!」
そして暁臣様は『無効化』とも言っていた。
けれど……本当は奪っていたの?
『無効にした』だけではなく、『奪った』のだとしたら——。
『無華』であることをずっと嘆いていたけれど、誰かの異能を奪ってまで『華』を得たいなど、望んでもいない。
それなのに、現実として百合の力は失われている。
『赤薔薇』を持ち、鮮やかな発火の『異能』を誇っていた百合。
もし、その力が本当に完全に無くなってしまったのだとしたら。
生まれながらに何も持たない『無華』である私なんかよりも、今の彼女は——。
「……っ人の『華』まで奪うなんて!!返しなさいよっ!それがないと、私はっ——」
その先の言葉は、激しい感情の昂ぶりに掻き消され、聞き取れなかった。
けれど、言葉の『続き』がなんであるかだけは、嫌と言うほど伝わってくる。
ただ、私の中で——大切に守ってきた何かが静かに、けれど決定的に崩れ去る音がした。
せっかく手にした『世界』が、また指の隙間からこぼれ落ちていくような音が。
「失礼。すみれ様の妹君——朝霞百合様とお見受けします。園遊会で一度お会いしましたね」
榊原様が、氷の刃のように静かな声で割って入った。
けれど、その声音さえ、私は水底から聞いているみたいに遠い。
目の前で起きていることが現実であり、当事者であるはずなのに、身体だけが置き去りになっている。
「殿下より、接近禁止令に近い通達が出ているはずです。これ以上、すみれ様を惑わす発言はお控えください。——失礼いたします」
「っ、待ちなさいよ!逃げる気!?この『無華』のくせにっ!!——!!」



