【Web版】無華の花嫁2~花開く乙女は、お妃教育の先で黒薔薇の殿下に溺愛される~

「ありがとうございます……」

両手で受け取ると、掌から暁臣様への想いが伝わっていくような錯覚を覚える。

……本当に、買ってしまった。
人生で初めての、私から誰かへの贈り物。
胸の奥で、小さく希望の鐘が鳴る。

嬉しいのに、少しだけ怖い。
この包みを渡す時、暁臣様はどんな顔をされるのだろう。
戸惑われるだろうか。それとも、喜んでくださるだろうか。
そう思うと、窓の外に広がる紅葉よりも鮮やかな期待が、胸の中にそっと広がっていった。

大切に包みを抱えて歩き出すと、隣の信子さんが小さく咳払いをした。

「……すみれお嬢様。もしよろしければ、お嬢様用の巾着なども見てみませんか?」
「私の……巾着、ですか?」
「はい。先ほどからお財布を直接袂に入れてらっしゃいましたから。大切なものを守る入れ物も必要ですよ」

信子さんが視線を向けた先には、色とりどりの小物が並ぶ一角があった。
ちりめんで作られた、ころんとした巾着。
網目の美しい籠のような巾着。
小さな世界なのに、そこにも『選ぶ楽しさ』が詰まっている。

「少し、見てもいいですか?」
「もちろんです。ゆっくり見て回りましょう」

どれも可愛らしくて目移りしてしまう。
けれど、いざ自分の物となると、どれが私に相応しいのか余計に分からなくなってしまう。
『自分の物を選ぶ』と言う行為は、まだ慣れない。

迷いながら歩いていると、ふと、ガラスケースの中に並ぶ帯留めに目が留まった。
掌に収まるほどの小さな世界。派手さはない。
けれど驚くほど精密な細工が施され、息を呑む。

銀細工、七宝、陶器——。
どれも上品で、控えめで、凛とした美しさがある。

そんなことを思いながら覗き込んでいると、ケースの隅に置かれた一つに、心が強く引き寄せられた。

「……これ」

白を基調にした小さな花の帯留め。
鈴のように慎ましやかに下を向いた形が、寄り添うように連なっている。