伺うように信子さんを見ると、優しい微笑みで頷いてくれた。
その頷きが、私の背中を押す。
——けれど、値段を尋ねるのはやはり怖い。
数字を聞いた途端、手が勝手に引っ込んでしまいそうで。
「……おいくら、でしょうか」
「こちらは、三十五円でございます」
店員さんは、私の緊張を察したようにほんの少し間を置いてから、恭しく告げた。
三十五。
それが世間一般でどれほどの価値なのか、恥ずかしながら今の私には正確には分からない。
多いのか、少ないのか……それすら正直、よく分からない。
でも、不思議と——これを買っても、お財布はまだ軽くならない気がした。
『私にもできる』と言う手応えが、先に胸へ来た。
「……それでは、こちらを……お願いします」
声が、自分でも驚くほどか細く。
店員さんが丁寧に品を受け取り、恭しく奥へと下がっていく。
「……すみれお嬢様。せっかくですから、贈り物用に包んでいただきましょうか」
「……包む、と言うことが……できるのですか?」
ただ『買う』だけではない。
誰かに贈るために、心を込めて飾る。
そんな文化がこの世にはあるのだと、今さらのように知って胸が熱くなる。
ほどなくして戻ってきた店員さんの手には、美しい藍色の包みが載せられていた。
革の手帳は柔らかな白い紙に守られ、さらに品のよい箱に納められ、最後は深い色の紐で静かに結ばれている。
その瞬間——ただの『品物』だった手帳が、世界にたった一つの『贈り物』へと変わっていった気がした。
『暁臣様のためのもの』として、形を与えられた気がした。
その頷きが、私の背中を押す。
——けれど、値段を尋ねるのはやはり怖い。
数字を聞いた途端、手が勝手に引っ込んでしまいそうで。
「……おいくら、でしょうか」
「こちらは、三十五円でございます」
店員さんは、私の緊張を察したようにほんの少し間を置いてから、恭しく告げた。
三十五。
それが世間一般でどれほどの価値なのか、恥ずかしながら今の私には正確には分からない。
多いのか、少ないのか……それすら正直、よく分からない。
でも、不思議と——これを買っても、お財布はまだ軽くならない気がした。
『私にもできる』と言う手応えが、先に胸へ来た。
「……それでは、こちらを……お願いします」
声が、自分でも驚くほどか細く。
店員さんが丁寧に品を受け取り、恭しく奥へと下がっていく。
「……すみれお嬢様。せっかくですから、贈り物用に包んでいただきましょうか」
「……包む、と言うことが……できるのですか?」
ただ『買う』だけではない。
誰かに贈るために、心を込めて飾る。
そんな文化がこの世にはあるのだと、今さらのように知って胸が熱くなる。
ほどなくして戻ってきた店員さんの手には、美しい藍色の包みが載せられていた。
革の手帳は柔らかな白い紙に守られ、さらに品のよい箱に納められ、最後は深い色の紐で静かに結ばれている。
その瞬間——ただの『品物』だった手帳が、世界にたった一つの『贈り物』へと変わっていった気がした。
『暁臣様のためのもの』として、形を与えられた気がした。



