机の引き出しの奥に大切にしまってある、小さな革のお財布をそっと手に取る。
掌に馴染む柔らかな感触と、予想以上のずっしりとした重み。
『そうだな。すみれが自由に使える金についても、近いうちに渡そうと考えていた』
暁臣様はあの時仰った通り、毎月決まった額のお金を私に渡してくださる。
これまで、特にほしいものもなかった。
だから、一緒にいただいたこのお財布の中へ、受け取るたび大事にしまい込んできた。
中身を改めて数えたことは一度もない。
怖かったのだ。
自分が持ってはいけないものを持っている気がして、数字にしてしまうと現実になってしまいそうで。
それでも、確かにそこには重みがある。
『私のために』与えられた重みが。
けれど今——私には、どうしても手に入れたいものがある。
誰かに与えられるのを待つのではなく、自分の意思で選び、自分の手で買いたいものが。
「……あの、暁臣様。以前、信子さんとお買い物に行きたいとお話ししたかと思うのですが……」
「信子殿と?」
「はい。それで、次回信子さんがいらした時に、少し外出をさせていただきたくて」
「……俺とではなく、信子殿と、か?」
「え……?はい。信子さんと」
夕食の席で勇気を出して切り出してみたものの、暁臣様はなんだか少しだけ不満そうな顔をされた。
やっぱり……勝手に千鶴様の邸へ行ってしまった件があるから、許可してくださらないのかもしれない。
私の心臓が、トクン、と跳ねる。
「……ダメ、でしょうか?」
「いや、問題はない。だが、二人だけで出かけさせるわけにはいかないからな。榊原を付けるが、それで構わないか?」
「はい!大丈夫です。ありがとうございます」
ほっと息が漏れそうになるのを、必死で堪えた。
嬉しい。
許されることが、こんなにも嬉しいなんて。
算術も少しずつ習っている。
算盤の玉を弾くのも、ようやく慣れてきた。
きっと、自分でお買い物もできるはず。
掌に馴染む柔らかな感触と、予想以上のずっしりとした重み。
『そうだな。すみれが自由に使える金についても、近いうちに渡そうと考えていた』
暁臣様はあの時仰った通り、毎月決まった額のお金を私に渡してくださる。
これまで、特にほしいものもなかった。
だから、一緒にいただいたこのお財布の中へ、受け取るたび大事にしまい込んできた。
中身を改めて数えたことは一度もない。
怖かったのだ。
自分が持ってはいけないものを持っている気がして、数字にしてしまうと現実になってしまいそうで。
それでも、確かにそこには重みがある。
『私のために』与えられた重みが。
けれど今——私には、どうしても手に入れたいものがある。
誰かに与えられるのを待つのではなく、自分の意思で選び、自分の手で買いたいものが。
「……あの、暁臣様。以前、信子さんとお買い物に行きたいとお話ししたかと思うのですが……」
「信子殿と?」
「はい。それで、次回信子さんがいらした時に、少し外出をさせていただきたくて」
「……俺とではなく、信子殿と、か?」
「え……?はい。信子さんと」
夕食の席で勇気を出して切り出してみたものの、暁臣様はなんだか少しだけ不満そうな顔をされた。
やっぱり……勝手に千鶴様の邸へ行ってしまった件があるから、許可してくださらないのかもしれない。
私の心臓が、トクン、と跳ねる。
「……ダメ、でしょうか?」
「いや、問題はない。だが、二人だけで出かけさせるわけにはいかないからな。榊原を付けるが、それで構わないか?」
「はい!大丈夫です。ありがとうございます」
ほっと息が漏れそうになるのを、必死で堪えた。
嬉しい。
許されることが、こんなにも嬉しいなんて。
算術も少しずつ習っている。
算盤の玉を弾くのも、ようやく慣れてきた。
きっと、自分でお買い物もできるはず。



