え……!?これだけではないの……?
驚く私をよそに、別の反物がさらりと差し出された。
今度は、春の訪れを予感させるような、淡く上品な藤色。
そこに清らかな流水と、舞い遊ぶ小さな蝶が描かれている。
「祝賀会ほど格式張る必要はございませんが、殿下のお連れとして不足のないお品でございます」
「……ありがとうございます。では、そちらも、お願いします」
藤色。
あの園遊会での出来事を思い出して、胸の奥が微かにざわめく。
けれど、今の私には信子さんも、藤波様たちも、そして暁臣様もいる。
一人で震える必要はないのだと、少しずつ学んでいる。
布の上に落ちる柔らかな光を見つめながら、祈るような気持ちになる。
この振袖を着て過ごす新しい一年が、どうか、どうか無事に過ぎますように。
そして——無事であるだけでなく、私が私として、笑えますように。
新しい年。新しい振袖。
それを纏い、暁臣様の隣で微笑む自分を、まだ少しだけ怖がりながら。
それでも私は、白銀の雪原を歩むような期待を、確かに胸に抱いていた。
冷たい空気の中に、きらりと光る道が見える気がした。
驚く私をよそに、別の反物がさらりと差し出された。
今度は、春の訪れを予感させるような、淡く上品な藤色。
そこに清らかな流水と、舞い遊ぶ小さな蝶が描かれている。
「祝賀会ほど格式張る必要はございませんが、殿下のお連れとして不足のないお品でございます」
「……ありがとうございます。では、そちらも、お願いします」
藤色。
あの園遊会での出来事を思い出して、胸の奥が微かにざわめく。
けれど、今の私には信子さんも、藤波様たちも、そして暁臣様もいる。
一人で震える必要はないのだと、少しずつ学んでいる。
布の上に落ちる柔らかな光を見つめながら、祈るような気持ちになる。
この振袖を着て過ごす新しい一年が、どうか、どうか無事に過ぎますように。
そして——無事であるだけでなく、私が私として、笑えますように。
新しい年。新しい振袖。
それを纏い、暁臣様の隣で微笑む自分を、まだ少しだけ怖がりながら。
それでも私は、白銀の雪原を歩むような期待を、確かに胸に抱いていた。
冷たい空気の中に、きらりと光る道が見える気がした。



