【Web版】無華の花嫁2~花開く乙女は、お妃教育の先で黒薔薇の殿下に溺愛される~

「……ん、っ……」

いつもとは違う。
身体全体を包み込むような、心地よい重み。
それと、すぐそばにある微かな熱に気づいて、意識がふわりと浮上した。

ゆっくり瞼を持ち上げる。
そこには見慣れた天井があるはずだった——のに。

色味が、どこか違う。
カーテンの影の落ち方も、空気の匂いも。
ぼんやりした頭のまま身じろぎをして、ふと横に視線を動かした。

「!?あ、暁臣様……!!」

ほんの目の前。
触れ合うほど間近に、暁臣様の端正な寝顔が視界に入る。

心臓が跳ね上がり、私は反射的に起き上がろうとして——その瞬間、自分の姿に気づいて息を呑む。
帯は緩められ、衿元は無惨に寛ぎ、肌襦袢さえ着崩れてしまっている。

昨晩の記憶を必死に手繰り寄せた。
そうだ。彼の部屋へ招き入れられ、抱きしめられ——。
その後の記憶が、ぷつりと途絶えている。

……なんてことを。

私はあのまま暁臣様の腕の中で、あろうことかそのまま眠りこけてしまったのだ。
あんなに甘えて。自分からしがみついて。
恋だと認めたばかりの心が、嬉しさと羞恥でぐちゃぐちゃになる。

「……起きたか?」
「えっ、あ、わっ……」

寝惚けていらっしゃるのか。
私が離れようとした瞬間、引き寄せられるようにして——再び暁臣様の腕の中へ連れ戻された。

耳元をくすぐる、穏やかな寝息。
胸に頬が触れるほどの距離。
熱が、じわりと伝わってくる。

『早く起きなければ』
『申し訳ないことをした』

——頭の中ではそんな正論が渦巻いているのに。
腕の強さと、そこから伝わる確かな体温があまりに心地よくて、抗うのをやめてしまう。
もう少しだけ。
もう少しだけ、このまま微睡みの中にいたい——と、願ってしまった。

こんなに安心させる腕を、どうして今さら知ってしまったのだろう。