独りぼっちの妖狐の娘は、一匹狼の龍神と結ばれる

 不思議な夢を見た。
 私の周りに火花が飛び散っていて、私が歩いた地面には花が咲いていて。
 そんな夢だった。
 その翌日から、私は、突然、妖術が使えるようになった。
 今までの訓練が実を結んだのだろう、と花咲(はなさ)さんは言っていた。
 花壇に花を咲かせられるようになった。
 枯れていた池の水を復活させることができた。
 火を生み出すことができた。
 ……それは、姉上や兄上よりもはるかに強い力だった。
「すごいです!(ゆき)さま!才能が開花しましたね!」
「……よくやった、(ゆき)
「やっぱり、(ひじり)さまは正しかった!」
 私に微笑みかけてくれる(ひじり)さまに、恋をした。
 私の為に着物を買ってくれた(ひじり)さまに。
 私は、いつか必ず妖術が使えるようになると信じてくれた(ひじり)さまに。
「……ありがとう、ございます」
 物を浮かせることができた。
 人を眠らせることができた。
 ……記憶を消すことができた。
 私が妖術を使えるようになったことは、すぐに狐ノ上(このうえ)家に伝わった。
 兄上からは、祝福の手紙が届いた。
 ……他の家族からは、手紙は届かなかった。
 私のことなんて、もうどうでもいいのだろう。


 ある日。
 龍之宮舘(りゅうのみややかた)と呼ばれる龍城(りゅうじょう)家の人間だけが立ち入りを許された屋敷の庭から、火の手が上がった。
 すぐに消火されたけれど、その後、(ひじり)さまは、部屋から出てこなくなった。
(ひじり)さま……。朝食を……」
「入るな。……いらない」
 (ひじり)さまが言葉を発すると、障子の奥で、火花が散っているのが見えた。
「……分かりました」
 あの時、龍之宮舘(りゅうのみややかた)にいたのは、(ひじり)さまだけだったらしい。
 ……つまり、あの火は、(ひじり)さまが生み出したもの……。
 しかも、わざと生み出そうとした火ではない。
 ……それくらい、(ひじり)さまの霊力は強いのだ。
 なにか、私にできることはあるだろうか。
 …………分からない。
 私は、最近ようやく妖術を使えるようになった、ただの小娘でしかない。
 まだ、上手く妖術をコントロールすることもできない。
 私には、なにもできない――。