独りぼっちの妖狐の娘は、一匹狼の龍神と結ばれる

「どうです?(ひじり)さま、優しいでしょう?」
「……意外と、優しかった、かも」
 昼食を取りながら、そんな話をする。
(ひじり)さまが当主だから、今の龍城(りゅうじょう)があると思うの。昔の龍城(りゅうじょう)家は、なんていうか、その……ちょっと荒れてたから」
 同じ一族や種族同士での争いが絶えなかったそうだ。
「……でも、(ひじり)さまが当主になってからは変わったかな。すごいよね。何か不思議なパワーでもあるのかな?」
 小さい子どもに向けて微笑みかける(ひじり)さまを思い出す。
(ゆき)さまも、(ひじり)さまに恋するかもですね。龍神族の中でも、(ひじり)さまのことが好きだって人、結構いますし」
 どうだろう。
 あの人、私には冷たいからな……。
「まあ、自分だけに優しい人が良い、って人もいますしね。人それぞれだし、無理に好きにならなくても良いと思いますよ」
 ……多分、私が彼を好きになっても、同じくらいの愛は返ってこないだろう。
 なら、好きになっても、意味がないよね。
 両想いになれない恋なんて……。
 というか、私のことを好きになってくれる人なんて、いないよね。
「ごちそうさまでした。じゃあ、私、先に戻りますね」
「あ、はい……」
 ネガティブな気持ちをどうにか外に追いやって、黙々とごはんを食べ進める。
「ごちそうさまでした」
 ちゃんとごはんが用意されているこの家での暮らしは幸せだ。
 狐ノ上(このうえ)では、ごはんが用意されていたことなんてなかったから。
「……戻るか」
 食器を下げて、部屋に戻る。
 この後は、また妖術についての勉強だ。
 狐ノ上(このうえ)での訓練よりも、はるかに楽だし、自分に合っていると思う。
 ……初めから、龍城(りゅうじょう)家に生まれたかったな。