運命の歯車が狂った。

杏子(あんず)!見てー!」
「わあ!キレイな桜……」
 神喰家本邸。
 私、神楽(かぐら) 杏子(あんず)は、お父さんについて、ここに来ていた。
「だよね!私、ここの桜が一番好き!」
 神喰(かみじき) 桜良(さくら)
 私たちの本家である神喰家の次期当主。
 私は、小さい頃から桜良(さくら)のそばにいた。
 神楽が筆頭分家だからだと思う。
 神楽家は、分家の中でも格が上なのだ。
「もう大学生かー」
「それな!実感ないよね神坂(かんざか)学園と屋敷の行き来しかしてないうちに、いつの間にか大学生か……」
「大学も、どうせ神喰一族だけの授業なんでしょ?つまんなーい」
「仕方ないに決まってるじゃない。神喰一族は、外に出ちゃいけない一族なんだから」
 神楽(かぐら) 柚子(ゆず)
 私の妹だ。
「そうだけど……」
 神喰家は、古くからこの地に暮らしている名家。
 でも、外に出てはいけない。
 神坂(かんざか)学園は、神喰一族の子どもや、特別に通うことを許された名家の子どもが通う学校。
 あまり知らない人のほうが多いけれど、名門校ではある。
 神坂(かんざか)学園の裏門は、神喰本邸の裏口と通路で繋がっていて、神喰一族の子どもたちは、その通路を通って学校に通っている。
 外との接触は、ほぼ絶たれている。
「……神楽(かぐら)になんか、生まれたくなかった」
「お姉!」
 ぽろりと本音が溢れる。
「あ、ごめん……」
 神喰の次期当主として生まれてきた桜良は、私よりももっと苦しいはずなのに。
「いいよ、杏子(あんず)。神喰一族に生まれた人は、絶対一回はそう思うだろうし」
「ありがとー!」