「放課後、校内を案内してくれませんか?」
休み時間。僕の席の隣に立った芦屋さんが、声をかけてくる。僕は、周りを見渡してから、自分を指さした。
「えっと…僕?」
「えぇ。駄目でしょうか?」
チラチラと周りのクラスメイトが、芦屋さんを見る。彼女の近寄りがたい独特の雰囲気が、人を寄せつけないだけで、クラスメイトは、美人な彼女と話をしたそうに見える。その視線に気づいてるのか、気づいていないのか。はたまた、気にもしていないのか。彼女は僕をじっと見た。転校初日、僕がクラスで孤立していることに、芦屋さんは気づいていないのだろう。そんな彼女のお願いを断るのも、なんだか気が引けた。
「…じゃあ、放課後。」
そう短く返すと、芦屋さんがにこっと笑った。
「ありがとうございます。」
何人かには睨まれた気がしたが、彼女の視線が僕に刺さって、断ることが出来なかった。
―――放課後。
「じゃあ、行こうか。」
「お願いします。」
ぐるぐると校舎の中を案内する。…が、彼女はなぜか僕をじっと見ていた。遠慮のない視線。落ち着かない。
「…えと、分かりづらいとかある…?」
「…。いえ?そんなことはないですけど?」
「そっか…。」
見られているところから、穴があきそうだ…。かと言って「見るな。」とも言えず。目を合わせないようにして、居心地の悪さをこらえる。
「これでだいたい終わりかな…。」
「あら、この階段は?」
「ここはもう屋上にしか繋がってないから。あ、屋上は立ち入り禁止だよ。」
「そうなんですか。」
僕が言ったにも関わらず、芦屋さんは気にすることなく、階段のほうに進む。タタタッと階段を登る芦屋さん。屋上の扉に手をかける。僕は焦って追いかけた。
「えぇ⁉︎芦屋さん⁉︎屋上はダメだって!というか、鍵かかってるし‼︎」
「…?鍵くらい外せばいいのでは?ほら、行きましょう。」
ガチャリ、扉が音を立てた。鍵は、芦屋さんが触れた瞬間、開いたように見えた。
「あれ?あっ、ちょっ‼︎」
ドアを開けて、屋上に行く芦屋さんを追いかける。流石に転校初日の生徒が、屋上に行くのを放っておくわけにはいかない。案内した僕が怒られるだろう。屋上のフェンスに指をかけて、下を見下ろす芦屋さんに声をかける。
「ねぇ、芦屋さん…先生に怒られるから!」
真剣に怒ると、芦屋さんが僕の方を振り返る。初めて真正面から彼女と目が合った。大きな瞳と視線が絡んだ瞬間、バチリと音が鳴ったような気がした。
「やっぱり…やっと…」
「え?」
ぶわりと強い風が吹き、彼女の黒髪が揺れる。芦屋さんが、僕に飛びつくように抱きついた。
「え!えぇ⁉︎」
「やっと、見つけましたわ…!安倍晴明様!」
「ななな、なに⁉︎」
ぎゅうっと抱きしめられて動揺する。花のような香りと、柔らかな感触が、僕をパニックにさせた。女の子の代名詞のようなそれに、バタバタと手を動かす。突き飛ばせば、怪我をさせてしまうかもしれない。細い肩を出来る限り力加減をして、掴み、自分から離した。
「何を言ってるの⁉︎芦屋さん!僕は安倍だけど、安倍晴明じゃない!安倍右梗!」
そう言って、芦屋さんの目を見た。僕は真剣に言っているのに、芦屋さんはクスッと小さく、優雅に笑う。
「いえ、安倍晴明様は……『ここに』。」
芦屋さんが、そっと僕の胸に手を置く。
「わたくしには分かります。…安倍晴明様の『魂』がいらっしゃいますもの。」
「ちょっと…!やめて!」
うっとりと顔を近づけて話す芦屋さんが不気味なのに、ドキドキしてしまって、軽く突き飛ばす。それでも芦屋さんは気にしてないように笑った。
「ふふっ。確認したいことも、確認できましたので。今日は帰ります。明日からよろしくお願いしますね?では、ご機嫌よう。」
踊るように足取り軽く、屋上から出ていく。慌てて追いかけるも、もうそこには芦屋さんの姿はなかった。
「なんなんだ…⁉︎」
芦屋さんに触られた胸の奥が、バクバク鳴っている。いや、この胸のざわめきは心臓なのか?はたまた、彼女の言っていた『魂』…。そこまで考えて、僕はブンブンと首を振った。
休み時間。僕の席の隣に立った芦屋さんが、声をかけてくる。僕は、周りを見渡してから、自分を指さした。
「えっと…僕?」
「えぇ。駄目でしょうか?」
チラチラと周りのクラスメイトが、芦屋さんを見る。彼女の近寄りがたい独特の雰囲気が、人を寄せつけないだけで、クラスメイトは、美人な彼女と話をしたそうに見える。その視線に気づいてるのか、気づいていないのか。はたまた、気にもしていないのか。彼女は僕をじっと見た。転校初日、僕がクラスで孤立していることに、芦屋さんは気づいていないのだろう。そんな彼女のお願いを断るのも、なんだか気が引けた。
「…じゃあ、放課後。」
そう短く返すと、芦屋さんがにこっと笑った。
「ありがとうございます。」
何人かには睨まれた気がしたが、彼女の視線が僕に刺さって、断ることが出来なかった。
―――放課後。
「じゃあ、行こうか。」
「お願いします。」
ぐるぐると校舎の中を案内する。…が、彼女はなぜか僕をじっと見ていた。遠慮のない視線。落ち着かない。
「…えと、分かりづらいとかある…?」
「…。いえ?そんなことはないですけど?」
「そっか…。」
見られているところから、穴があきそうだ…。かと言って「見るな。」とも言えず。目を合わせないようにして、居心地の悪さをこらえる。
「これでだいたい終わりかな…。」
「あら、この階段は?」
「ここはもう屋上にしか繋がってないから。あ、屋上は立ち入り禁止だよ。」
「そうなんですか。」
僕が言ったにも関わらず、芦屋さんは気にすることなく、階段のほうに進む。タタタッと階段を登る芦屋さん。屋上の扉に手をかける。僕は焦って追いかけた。
「えぇ⁉︎芦屋さん⁉︎屋上はダメだって!というか、鍵かかってるし‼︎」
「…?鍵くらい外せばいいのでは?ほら、行きましょう。」
ガチャリ、扉が音を立てた。鍵は、芦屋さんが触れた瞬間、開いたように見えた。
「あれ?あっ、ちょっ‼︎」
ドアを開けて、屋上に行く芦屋さんを追いかける。流石に転校初日の生徒が、屋上に行くのを放っておくわけにはいかない。案内した僕が怒られるだろう。屋上のフェンスに指をかけて、下を見下ろす芦屋さんに声をかける。
「ねぇ、芦屋さん…先生に怒られるから!」
真剣に怒ると、芦屋さんが僕の方を振り返る。初めて真正面から彼女と目が合った。大きな瞳と視線が絡んだ瞬間、バチリと音が鳴ったような気がした。
「やっぱり…やっと…」
「え?」
ぶわりと強い風が吹き、彼女の黒髪が揺れる。芦屋さんが、僕に飛びつくように抱きついた。
「え!えぇ⁉︎」
「やっと、見つけましたわ…!安倍晴明様!」
「ななな、なに⁉︎」
ぎゅうっと抱きしめられて動揺する。花のような香りと、柔らかな感触が、僕をパニックにさせた。女の子の代名詞のようなそれに、バタバタと手を動かす。突き飛ばせば、怪我をさせてしまうかもしれない。細い肩を出来る限り力加減をして、掴み、自分から離した。
「何を言ってるの⁉︎芦屋さん!僕は安倍だけど、安倍晴明じゃない!安倍右梗!」
そう言って、芦屋さんの目を見た。僕は真剣に言っているのに、芦屋さんはクスッと小さく、優雅に笑う。
「いえ、安倍晴明様は……『ここに』。」
芦屋さんが、そっと僕の胸に手を置く。
「わたくしには分かります。…安倍晴明様の『魂』がいらっしゃいますもの。」
「ちょっと…!やめて!」
うっとりと顔を近づけて話す芦屋さんが不気味なのに、ドキドキしてしまって、軽く突き飛ばす。それでも芦屋さんは気にしてないように笑った。
「ふふっ。確認したいことも、確認できましたので。今日は帰ります。明日からよろしくお願いしますね?では、ご機嫌よう。」
踊るように足取り軽く、屋上から出ていく。慌てて追いかけるも、もうそこには芦屋さんの姿はなかった。
「なんなんだ…⁉︎」
芦屋さんに触られた胸の奥が、バクバク鳴っている。いや、この胸のざわめきは心臓なのか?はたまた、彼女の言っていた『魂』…。そこまで考えて、僕はブンブンと首を振った。



