猫先輩と俺


的までの距離28メートル。

6月の空気。
昼まで雨が降っていたせいで、射場(しゃじょう)から見える芝生には雨水がキラキラと輝いていた。


大前(おおまえ)が動き出したところで俺も準備にかかる。

小さく息を吐き、弓に矢を添える。
的を確認して静かに両手を上げると、パンッと矢が的に当たる音がした。

部員から「よし」と、応援の声が響く。


さすが大前。
次は俺の番だ。

的に狙いを定めて矢を離す。


バシンッ


「いっ」

ってぇ……。

ツルが俺の左腕に当たり、的まで飛ばなかった矢は近くの芝生に刺さった。

こういう時の袴は嫌いだ。
モロ腕が出ているんだもんな。

腕が痛くてジンジンする。


でも弓道には待った無し。
俺の後ろにいた奴が的に矢を当てる。そんな音が聞こえた。