ねえ、それって本当に嘘?

 高校になって入った文芸部の活動は、基本なあなあだ。
 出席、欠席は完全自由。活動計画もほぼない。部活に出ても宿題したり、お菓子を食べたり、雑談したりが当たり前。そんな状態だからぎすぎすした空気は一切なくて、部員同士仲はいい。
 だが、そのなあなあの空気の中で、僕はまあまあ尖った部類の部員だと思う。

「次の小説賞、絶対受賞したいんだよな? 綾斗(あやと)
「当たり前だ。中学のときから延々と落ち続けてるんだよ? そろそろ結果出したいっつうの!」

 夏休み中、顔を出す人間など皆無の部室に今日も僕はいる。そして、同じく文芸部、かつ公募勢、ただし、彼の場合は漫画家になりたいために、僕とは違うコンテストを目指している貝塚直樹(かいづかなおき)に今、自作の評価をしてもらっている。
 漫画と文芸。方向は違うが、直樹の小説を見る目は確かだ。彼と知り合ったおかげで僕の創作世界は随分広がったと思う。だから直樹には感謝している。

 しているのだ。でも。

 机の向こうでノートPCのモニターを睨む直樹を、僕はそっと窺う。
 斜めに流した前髪を、さらっと掻き上げるしなやかな指。そこから覗くしっとりと汗ばんだ額。風を入れるためなのか、第二ボタンまで開けられたカッターシャツの首元からは、くっきりとした陰影を刻む喉仏が見える。
 高一、高二と同じクラスで部活も一緒。親を除いたら、ともにいる時間が一番長いのが直樹だけれど、僕はこの一年ほどずっと困っている。
 直樹がそばにいると、彼のことをつい、見てしまう、から。